インプラントでの骨移植とは?治療にかかる費用や3つの手術方法を解説
こんにちは!大阪 梅田のえみは総合歯科、理事長の加藤直之です。
自分の歯のように噛めて、自然歯のような見た目を取り戻せるインプラント。一見とても魅力的ですが、外科手術を伴うインプラント治療を成功させるためには、顎の骨に十分な深さと幅が必要です。もし、骨が不足している方は骨移植を行うことで、安全なインプラント治療が可能になります。
そこで本記事では、インプラント治療における骨移植のメリット・デメリットやその種類について解説します。骨移植について理解し、インプラント治療にかかる費用や治療期間をお見積もりしたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
また、当院でのインプラント治療に関しては、下記のページで詳しく紹介しています。具体的な治療内容や費用について気になる方は、合わせてチェックしましょう。
目次
インプラント治療における骨移植とは?
骨移植とは、骨や歯茎を移植して骨を再生させる治療のことです。骨移植に係る手術を総称して「骨造成」とも呼ばれています。
インプラント治療では、歯茎を切開して顎の骨を削り、そこにインプラント体を埋入します。その際に、インプラント体を支えられるだけの十分な骨量がないと、骨結合が得られずインプラント体が安定しません。また、インプラント体が埋まりきらずに露出し、審美性に影響を与える場合もあります。
そのようなリスクを防ぐために、骨量が足りない箇所に骨移植を行います。骨移植で使用する移植材料は、自家骨、他家骨、代用骨、異種骨です(※1)。通常のインプラント治療よりも手術の難易度が上がるため、歯科医院によっては治療を断られる場合もあります。
※1参考:歯科インプラント治療指針
骨移植がインプラント治療に必要になる3つのケース
骨移植が必要となる顎骨の骨量の不足は、主に3つのケースによって引き起こされます。
- 歯周病が進行している
- 歯が抜けたところを放置している
- 合わない入れ歯を長時間使用している
それぞれ詳しく見ていきましょう。
歯周病が進行している
歯を支える顎骨が溶ける病気である「歯周病」が進行していると、すぐにインプラント治療は行えません。まずは歯周病の治療をして、状態が回復してから骨移植を行います。
歯周病は、日本の成人の約8割が感染していると言われている身近な病気です。そして、歯周病の患者数は年々、増加傾向にあります(※2)。
※2参考:平成28年歯科疾患実態調査結果の概要
また、歯を失う最も大きな原因も歯周病。歯周病が原因で歯を失い、インプラント治療を希望する方は、骨量が不足していることが多い印象です。
歯周病は、進行度合いから次に示す歯肉炎と歯周炎に分けられます。歯周炎まで進行していると骨が溶け始めるため、必ず早めに治療を受けるようにしましょう。
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歯が抜けたところを放置している
歯を取り戻す治療は費用と時間がかかりますが、だからといって治療を先延ばしにして抜けたまま放置するのは危険です。使っていない筋肉が衰えていくのと同様に、歯を支える骨に力が加わらないと次第に退化していきます。顎の骨が吸収されていき、痩せ細っていくのです。
そうなると、歯を取り戻す治療は時間経過とともに難しくなっていきます。結果的に治療費が高額になってしまうため、早めの歯科治療がおすすめです。
合わない入れ歯を長時間使用している
歯が抜けてしまい、とりあえずの暫定対処として入れ歯を着用している方も注意が必要です。噛み合わせの悪い入れ歯を着用していると、顎の骨はどんどん痩せていきます。合わない入れ歯の着用が骨の退化を招く理由は次の2つです。
- 噛み合わせが悪くなり、骨に適切な力が伝わらないため
- 入れ歯安定剤を使用しているため
入れ歯が合っていないと、顎の骨に適切な力が加わりません。そして、加わる力が大き過ぎると、その負担に耐えきれずに骨は少しずつ痩せていくでしょう。一方で、力が少なすぎても骨は退化し、次第に痩せていきます。
また、入れ歯と歯茎の密着を安定させるために使用する「入れ歯安定剤」の長期服用も、骨が痩せる大きな原因です。前回使用した入れ歯安定剤が残った状態で重ねて使用すると、歯の厚みが不均等になり、噛み合わせが損なわれます。それによって、顎骨に適切な力が加わらず、骨量が減少していくのです。
インプラントで骨移植をする3つのメリット
骨量が不足している状態でインプラント治療を強行した場合、顎の骨をインプラント体が貫通したり、歯の審美性が損なわれたりとリスクが伴います。そのようなリスクを回避するための骨移植には、次のような3つのメリットがあります。
- インプラント手術の安全性が高まる
- インプラントと骨の結合が強まる
- 歯茎の審美性が高くなる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
インプラント手術の安全性が高まる
厚みの不足した骨に対するインプラント治療は、インプラント体が骨を突き抜けることで上顎洞炎やインプラントの脱落を引き起こしかねません。上顎洞炎による症状は次の通りです。
- 頭や歯が痛い
- 目の奥に違和感を感じる
- 鼻が詰まる
- 口臭が酷くなる
骨移植を行うことで、インプラント体が骨や歯茎から突き出ることがなくなります。また、顎骨とインプラント体の骨結合が促進し、接合部が安定するため、手術の安全性が高まります。
インプラントと骨の結合が強まる
骨量が不足していると骨結合が阻害されるため、埋入したインプラントが安定しません。
骨移植によって骨量を確保するとインプラント体と顎骨が強く結合するため、インプラント体がグラついたり、脱落のリスクを防ぐことが可能です。また、長期的にもインプラントの安定性を維持できるため、治療後の不安もなく、安心して使い続けられるでしょう。
参考までに、治療費を節約するために骨移植を避けてしまうと、インプラントの寿命が短くなり、再手術が必要になります。結果的に、最初に骨移植を受けた場合よりも多額の治療費がかかりかねませんので、歯科医師としっかり相談して決めましょう。
歯茎の審美性が高くなる
歯科における「審美性」とは、見た目の美しさのことです。骨が痩せている状態だと歯茎が下がり、歯と歯茎のバランスが崩れるため、審美性が低くなります。
一方で、骨移植によって骨を増やすことで歯茎の形が整い、審美性は高まります。また、インプラント体の金属が歯茎から露出することがないため、より自然歯のような見た目を取り戻すことができるのです。
インプラントで骨移植をする3つのデメリット
安全なインプラント治療を実現し、審美性を高める骨移植には、以下のようなデメリットも存在します。
- 治療期間が長期化する
- 追加費用がかかる
- 痛みや腫れが生じることがある
それぞれ詳しく見ていきましょう。
治療期間が長期化する
骨折した骨の修復に時間がかかるのと同様、骨移植によって移植した骨は結合までに時間を要します。そのため、骨移植を伴うインプラント治療は、通常の治療と比較して治療期間が長期化するデメリットがあります。
具体的に、骨移植で移植した骨が固定するまでにかかる期間は1〜3ヶ月程度です。骨移植を伴わない場合や、骨移植の種類ごとの治療期間が気になる方は、以下の記事も参考にしてみてください。
関連記事:インプラントの治療期間は?治療の流れや骨造成に伴う期間の平均も解説
追加費用がかかる
骨移植を行うと、通常のインプラント治療の費用に対して追加費用がかかります。また、骨移植には「GBR(骨再生誘導法)」「サイナスリフト」「ソケットリフト」という3つの種類があり、それぞれ費用が異なります。
もし、ご予算の都合上、骨移植が厳しいという方はお気軽にご相談ください。当院では、患者様の意思を尊重した治療を行っております。場合によっては、インプラント治療以外の治療方法もご提案させていただきます。
痛みや腫れが生じることがある
骨移植では外科手術を行い、歯肉を切開して必要に応じて骨を採取します。そのため、術後にはある程度の痛みや腫れが発生します。ただし、術中については麻酔が効いているため、痛みはありません。
当院では、眠っているような状態で、痛みを感じずに手術を受けられる静脈内鎮静法を採用しています。また、全国で100医院のみが治療を認められている、ポリリン酸を使った骨や歯周組織を再生する治療が可能です。これにより、大きな腫れや痛みを防げます。
インプラント治療における骨造成の3つの種類
骨移植の種類は、不足している顎骨の幅や高さによって分かれます。どの方法が適切かは術前の精密検査によって判定されます。主な骨移植の種類は次の3つです。
- GBR(骨再生誘導法)
- サイナスリフト
- ソケットリフト
それぞれ詳しく解説します。
GBR(骨再生誘導法)
顎骨の幅・高さが両方足りていない場合に適用される術式が、GBR法です。歯肉を切開し、人工の骨補填材や粉砕した自家骨を歯肉の中に入れることで、骨の再生を促します。自家骨を使用する場合は、下顎の骨を採取し、粉砕機で細かく砕いて使用します。
必要な骨量が多い場合、再生するまでに長い時間が必要です。しかし、そもそも必要な骨量が少ない場合は、インプラント体の埋入を同時に行えるので、治療期間が短く済むでしょう。
また、顎骨の高さを増やすために必要な骨量が多い場合、非吸収性のメンブレンと呼ばれる保護膜で該当箇所を覆います。これによって歯肉の生成を抑制し、骨の再生を補強するのです。
ただし、インプラントも同時に埋入し骨の再生を待つ症例と、顎骨の再生を待ってから別日にインプラントを埋入する症例と口腔内によって治療内容は変わります。サイナスリフトは上顎の骨の高さが5mm以下の場合に適用される術式であり、次のような流れで行われます。
- 頬側の歯茎の歯肉を切開する
- 骨と粘膜を剥がしてスペースを作る
- 骨補填材を充填する
- 切開した歯肉を戻し、縫合する
サイナスリフトは、10mm以上の骨の高さを増やせたり、上顎洞粘膜が破損した際に修復できるメリットがあります。また、1980年に発表された術式で歴史が深く、信頼性が高いです。
その一方で、ソケットリフトよりも手術後の腫れが出やすかったり、術後に上顎洞炎を起こす可能性があるデメリットも存在します。
ソケットリフト
ソケットリフトは、上顎の骨の高さが不足しており、高さが6mm以上の場合に適用される術式です。具体的な手術の手順は以下の通り。
- インプラントを入れる箇所の顎骨に穴を開ける
- 上顎洞の1mm手前でドリリングを止めり
- 口腔内から上顎洞粘膜を上に押し上げる
- このタイミングでインプラント体の埋入を同時に行う場合もある
ソケットリフトは、サイナスリフトと比べて傷口が小さく、細菌感染のリスクが少ないです。また、処置にかかる時間も短いため、患者様の精神的負担も少なくて済むでしょう。
骨移植を伴うインプラント治療の費用・保険について
骨移植を希望したい方にとって、コストの問題は大きな不安材料となるでしょう。事実、骨移植は、通常のインプラント治療と同様に保険が適用されません。そのため、治療費は全額患者様の自己負担となります。ただし、医療費控除を受けることは可能です。
当院における、骨移植の各手術法ごとの1箇所にかかる費用は次の通りです。
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骨移植は高い技術が求められる手術であり、保険適用外であることから費用も高額になります。
しかし、骨移植によってインプラント手術の安全性が確保され、将来的なインプラントの寿命を延ばし、審美性を高めてくれます。
以上のことを踏まえると、骨移植を行う価値は十分あると言えるでしょう。
インプラント治療の骨移植に関するQ&A
最後に、インプラント治療における骨移植について、よくある質問をご紹介します。
- 骨移植(骨造成)を伴うインプラント治療の成功率はどのくらいですか
- インプラントで骨移植(骨造成)を受けた患者の体験談を教えてください
- 骨移植を伴うインプラントの治療期間はどのくらいかかりますか
それぞれ詳しく見ていきましょう。
骨移植(骨造成)を伴うインプラント治療の成功率はどのくらいですか
インプラント手術を行い、骨とインプラント体が結合する成功率は、埋入位置によって次のように変わります(※3)。
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※3参考:口腔インプラントの生存に関する疫学調査:オッセオインテグレーションの獲得と意地から見た評価
骨量が不足している状態でインプラント治療を行うことは、インプラント体のグラつきや脱落などの失敗に繋がりかねません。そのため、骨移植によりインプラント治療の成功率を高めることで、長期的な安定が期待できるでしょう。
インプラントで骨移植(骨造成)を受けた患者の体験談を教えてください
歯根が割れたり欠けたりしていたため、他院で抜歯と同時に骨移植を行い、インプラントを2本埋入した患者様の体験談をご紹介します。
元々銀歯があり、歯がない状態には慣れていましたが、インプラント治療をした後には少し違和感がありました。それも1週間も経たないうちに慣れてきて、現在は本当の自分の歯と変わらない感覚です。手術をする前は抵抗がありましたが、思い切って治療してみてよかったです。
(引用元:インプラント治療例 40代女性)
インプラント治療に骨移植が加わることで、さらに恐怖心や不安感が増す方は多いと思います。当院では、患者様の悩みや治療に関する疑問を解消した上で、治療に入らせていただきます。骨移植に対する不安もお気軽にご相談ください。
骨移植を伴うインプラントの治療期間はどのくらいかかりますか
埋入に十分な骨量を確保できる場合のインプラント治療期間は、上顎で約3ヶ月程、下顎で約2ヶ月程です。骨移植を伴う場合は、骨の再生を待つ必要があるため、さらに1〜3ヶ月ほどかかります。
また、歯周病が進行している場合には歯周病の治療を先に行い、病態の回復を待ちます。その際、インプラント治療の開始はさらに延びることになるので、余裕を持った治療期間を想定しておきましょう。
まとめ|インプラント治療の骨移植は医師としっかり相談しましょう
インプラント治療における骨移植は、安全に手術を行い、埋入したインプラントを長持ちさせる上で必要な治療法です。ただし、その分の追加費用と治療期間を要するため、信頼できる歯科医師と相談して、骨移植の必要有無や種類を決めましょう。
また、当院では患者様一人一人の悩みや不安に寄り添ったインプラント治療を行っております。ご興味のある方は、ぜひ以下のページをご覧ください。