歯周病はうつるのか?5つの感染経路や発症を予防するための対策も紹介
こんにちは!大阪 梅田のえみは総合歯科、理事長の加藤直之です。
歯周病は、プラークに潜む歯周病菌によって引き起こされる病気です。歯周病菌は、唾液を介して人から人へとうつります。感染経路を把握しておくことで、あなたや家族の感染リスクを下げられるでしょう。また、感染して発症するかどうかは、年齢や噛み合わせ、生活習慣といった要素によって異なります。
そこで本記事では、歯周病がうつる感染経路について解説します。歯周病が発症する原因や発症を予防するための対策も掲載しているので、感染を予防したい方や発症を抑えたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
また、当院での歯周病治療は、下記のページで詳しく紹介しています。歯周病がうつった場合の治療法や費用が気になる方は、合わせてチェックしましょう。
目次
歯周病は人にうつるのか?
歯周病菌は、虫歯菌と同様に唾液を介して人から人へとうつります。生まれたばかりの頃は、歯周病菌は口の中に存在しません。成長していく過程で、家族や友人、恋人などの唾液に含まれる歯周病菌が、様々な感染経路で口の中に侵入してくるのです。
全国の2,097人を対象にした調査では、歯周病の基準となる「歯周ポケットの深さが4mm以上ある人」の割合は、全体の47.9%を占めました(※1)。また、年を重ねるごとに歯周病の感染率は増え、75歳以上の方の感染率は年々増加傾向にあります(図1)。
※1参考:令和4年歯科疾患実態調査結果の概要
図1:歯周病ポケット(4mm以上)を有する人の割合の年齢階級別年次推移
特に、生活を共にしている親子や夫婦の間では、歯周病菌が感染しやすいので、一人でも歯周病に感染している方がいる場合は注意が必要です。一度感染した歯周病菌を完全になくすことは難しいですが、治療によって歯周病菌の数は減らせます。
歯周病が高確率でうつる5つの感染経路
普段、何気なくしている家族間の共用によって歯周病に感染する恐れがあります。感染経路を把握し、早い段階で対策を講じることで、将来的に保有している健康な歯の本数を増やせるでしょう。歯周病が高確率でうつる主な感染経路は、以下のとおりです。
- 歯ブラシ・歯磨き粉の共用
- 親から子に与える食べ物
- 恋人や家族間でのキス
- 食べ物・飲み物のシェア
- 鍋料理・大皿料理の取り分け
それぞれ詳しく見ていきましょう。
歯ブラシ・歯磨き粉の共用
家族の間で歯ブラシや歯磨き粉を共用している場合は、注意が必要です。ブラッシング後の歯ブラシには、多くの歯周病菌が付着しています。歯ブラシを水でゆすいだとしても、完全に歯周病菌を落とすのは難しいでしょう。
また、歯ブラシは別々の物を使っていたとしても、歯磨き粉を共用している方は多いと思います。歯周病菌が付着した歯ブラシに直接歯磨き粉を付けることで、歯周病菌は歯磨き粉から他の歯ブラシ、人の口内へと間接的に移動する可能性もあるのです。
そのため、歯ブラシや歯磨き粉は、一人ひとり別の物を使用することが推奨されます。新しく歯磨き粉を購入する場合は、歯周病菌の増殖を抑える成分が配合されたタイプを選ぶのがおすすめです。
親から子に与える食べ物
生まれたばかりの赤ちゃんには歯周病菌がいませんが、親からの食べ物の与えられ方によって、早々に感染してしまう可能性があります。食べられるようになった離乳食を、以下のように与えてしまうと、歯周病の感染リスクは高まります。
- 自分が食べている箸で、子供に離乳食を与える
- 軽く咀嚼して小さくした離乳食を、子供に与える
歯周病菌の親から子への垂直感染が最も起こりやすいのは、1歳半から2歳半くらいまでの間です。この時期の子供への食べ物の与え方には、十分注意してください。
恋人や家族間でのキス
夫婦や恋人、親子のスキンシップとしてのキスは、唾液が直接移動し、歯周病菌がうつる可能性が高いです。移動した先の口内環境が悪く、菌が住みつきやすい環境であれば、歯周病菌は定着します。
ただし、歯周病菌がうつる恐れがあるからといって、スキンシップの一つであるキスを全くしないというのは難しいでしょう。そのため、歯周病菌が定着しない又は感染しても発症しないための口内環境作りが欠かせません。
食べ物・飲み物のシェア
一つの食べ物や飲み物をシェアした場合も、歯周病に感染するリスクがあります。箸に付着した歯周病菌が食べ物に混入していたり、コップの飲み口に歯周病が付着していたりする可能性があるからです。
食べ物や飲み物をシェアする場合は、食べ飲み始める前に別々の皿やコップに分けておくのが良いでしょう。
鍋料理・大皿料理の取り分け
複数人で食事をする際に、鍋料理や大皿料理を個別の皿に取り分ける場面に出くわしたことがある方も多いのではないでしょうか。
既に使用済みの箸を使って取り分けることで、歯周病菌がそれぞれの皿の料理に広がる恐れがあります。食べ物を取り分ける際は、未使用の箸や取り分け用の菜箸を使いましょう。
うつった歯周病が発症する4つの原因
歯周病がうつったからといって、必ずしも発症するわけではありません。歯周病が発症するかどうかは、免疫の強さや歯周病菌の種類が大きく関係しています。歯周病の原因について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
関連記事:歯周病の原因は?悪化させる5つのリスクファクターと進行度別の治療方法
感染した歯周病が発症する主な原因は、以下のとおりです。
- レッドコンプレックスの存在
- 悪い生活習慣
- 年齢・病気による免疫力の低下
- 特定の歯への強い咬合力
それぞれ詳しく解説します。
レッドコンプレックスの存在
歯周病を引き起こす悪玉菌は10~20種類いますが、その中でも特に毒性の強い菌の総称が「レッドコンプレックス」です。レッドコンプレックスが口内にいると、歯周病を発症しやすくなります。レッドコンプレックスに含まれる3種類の菌の特徴は、以下のとおりです。
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悪い生活習慣
歯周病の発症のしやすさは、悪い生活習慣が大きく関係しています。生活習慣によって、歯周病の発症を誘発する主な例は、以下のとおりです。
- 歯磨きで磨き残したプラークに潜む歯周病菌が繁殖して発症する
- タバコにより、口内の酸素や栄養素が不足したり、ヤニの上に歯周病菌が付着したりすることで発症する
- 睡眠不足や疲労、ストレスが続くことで免疫が低下し、歯周病が発症する
不十分な歯磨きや喫煙によって、歯周病菌が繁殖しやすい環境を作ってしまいます。また、不規則な生活を送ることで、体にストレスがかかり、体が菌と戦うために必要な免疫力が低下してしまうのです。
年齢・病気による免疫力の低下
生活習慣に問題がない方も、先天的な免疫疾患があったり、後天的な病気を患っていたりする場合は免疫力が低下するため、歯周病が発症しやすくなります。特に、糖尿病を患っている方は、正常な方に比べて約2倍以上も発症率が高いです。
また、一般的に加齢と共に抵抗力も落ちてくるので、歯周病リスクが高まります。加齢に伴う歯茎の退縮や歯を支える骨の量の減少、唾液の分泌量の減少も、歯周病の発症リスクを高める大きな原因です。
特定の歯への強い咬合力
嚙み合わせが悪かったり、歯ぎしりや食いしばりの癖があったりする場合は、特定の歯に強い力が加わりやすいです。特定の歯に力が加わり続けることで、歯や歯周組織が損傷する咬合性外傷が起き、歯がぐらつくことがあります。
歯が揺さぶられることで、歯周ポケットが深くなり、歯茎や歯槽骨に歯周病菌が侵入し、歯周病を発症するのです。また、噛み合わせの悪さからブラッシングが行き届かない箇所には、プラークが溜まりやすくなるので、歯周病リスクも高まります。
歯周病がうつると現れる3つの症状
歯周病は自覚症状が現れにくい病気です。自覚症状が現れた頃には、中等度から重度まで歯周病が進行している可能性があります。歯周病が発症した場合の主な症状は、以下のとおりです。
- 歯肉の腫れ・出血
- 口臭が気になる
- 歯が浮いている感覚がある
それぞれ詳しく見ていきましょう。
歯肉の腫れ・出血
歯周病によって歯肉に炎症が起きると、歯肉が腫れて柔らかい感触になります。また、歯磨きや触った際に、僅かな力でも出血しやすくなるのが特徴です。
歯肉の炎症は、次第に歯を支える骨である歯槽骨にまで波及します。この段階は、歯周炎と呼ばれ、歯槽骨が徐々に破壊されていきます。歯肉の腫れも強くなるので、早急に治療を受ける必要があるでしょう。
口臭が気になる
歯周病の症状の一つとして、口臭の悪化が挙げられます。歯周病菌は、以下のような揮発性硫黄化合物と呼ばれるガスを発生させることで、悪臭を放つのです。
- ジメルサルファイド
- 硫化水素
- メチルメルカプタン
自分の口臭の悪化は普段の生活では気づきにくいので、未使用のコップやビニール袋に息を吹きかけて悪臭がするかどうかを確かめてみてください。
歯が浮いている感覚がある
歯周病が進行してくると、歯が浮いているような感覚になることがあります。歯が浮いたような感覚は、歯肉の腫れによって生じるものです。さらに進行すると、歯槽骨が溶かされて、歯のぐらつきへと症状は遷移していきます。
歯周病の発症を予防するための3つの対策
歯周病菌がうつったとしても、歯周病の発症を予防できれば、日常生活に支障はありません。歯周病菌の発症を抑えるためには、以下のような対策を行う必要があります。
- 歯科医院でクリーニングを受ける
- 生活習慣を見直す
- 歯磨きでのセルフケアを徹底する
口の中の歯周病菌を減らしたり、免疫力を高めたりする効果があるので、詳しく見ていきましょう。
歯科医院でクリーニングを受ける
定期的に歯科医院でクリーニングを受けることで、口内を清潔な状態に保てます。歯周病菌が潜伏するプラークは、入念なセルフケアによって除去できますが、歯石は歯科医院でなければ取れません。
歯石はプラークの溜まり場になるので、歯周病予防では、歯石の除去が必要です。また、歯ブラシが届きにくい隙間に溜まったプラークは、ネバついたバイオフィルムになっており、歯磨きで掃除するのは難しいでしょう。
当院では、歯垢や歯石の除去を目的とした歯のクリーニングを行っております。歯周病の検査も行うので、自覚症状が出ていない段階での早期発見が可能です。
生活習慣を見直す
口内環境の悪化や免疫力の低下を招く生活習慣を見直すことで、歯周病を予防できます。生活習慣を改善するための方法は、以下のとおりです。歯周病だけでなく、その他の生活習慣病も予防できるので、体全体の健康を保つことにも繋がります。
- 栄養バランスの取れた食生活を行う
- 糖分の多い間食は控える
- 歯周組織の抵抗力をつけるカルシウムや鉄分などを積極的に摂る
- 寝る直前の食事を控える
- タバコを吸わない
- 口呼吸をしない
- ストレスを適度に発散する
- 歯ぎしりや食いしばりの癖を治す
歯磨きでのセルフケアを徹底する
毎食後に欠かさず歯磨きを行うことで、できる限りプラークを取り除きます。既に歯肉炎を発症していて、歯肉の腫れにより歯が磨きづらい場合は、歯周病予防の歯磨き剤を使用するのがおすすめです。
また、歯の表面の汚れには歯ブラシ、歯と歯の隙間にはデンタルフロス、歯と歯茎の隙間には歯間ブラシを使うことで、歯の汚れを徹底的に除去できます。
歯周病はうつるのかに関するよくある質問
- 大人と子供で歯周病がうつるリスクは違う?
- 歯周病を発症すると見た目でわかる?
- 歯周病にかかった時の口臭はどんなにおい?
- 発症した歯周病に対して自分で行える治し方は?
- 一度感染した歯周病は治療で治る?
それぞれ詳しく見ていきましょう。
大人と子供で歯周病がうつるリスクは違う?
歯周病が最もうつりやすいのは、2歳前後です。大人は赤ちゃんと比べると歯周病がうつりにくく、3歳を過ぎると歯周病菌が付着しにくくなると言われています。
2歳までの子供は親から歯周病菌がうつるリスクが高いので、親が使った箸やコップ、お皿を子供と共用しないなどの対策が必要です。
歯周病を発症すると見た目でわかる?
歯周病の影響は、口内だけに留まりません。歯を支えている歯槽骨が破壊されることによって歯茎が下がり、歯が長く見えたり、歯と歯の間に隙間が見えたりと見た目の問題も発生します。
また、歯がぐらついてくることで、歯並びが変化する可能性もあります。歯並びは見た目の印象に直結するので、歯周病を放置するリスクは高いと言えるでしょう。
歯周病にかかった時の口臭はどんなにおい?
歯周病菌が発生させるガスは、以下のような臭いに例えられます。
- メチルメルカプタンによる「腐った玉ねぎ」の臭い
- 硫化水素による「腐った卵」の臭い
- ジメチルサルファイドによる「生ゴミ」の臭い
上記のような揮発性硫黄化合物は、混合することでさらに悪臭になります。悪臭を放つ歯周病菌がいるかどうかは、歯科医院の細菌検査で調査できます。
発症した歯周病に対して自分で行える治し方は?
自宅で歯周病を治すことはできませんが、症状を抑えることは可能です。歯周病予防を強調している歯磨きを使用することで、歯肉の腫れや出血、口臭などを一時的に抑制する効果が期待できます。
ただし、市販の歯磨き粉には効力の強い成分は配合できないので、絶大な効果は期待できません。歯周病の悪化を防ぐために、早急に歯科医院を受診することを推奨します。
一度感染した歯周病は治療で治る?
歯周病菌を完全に除去するのは難しいため、一度歯周病に感染したら完治はしません。ただし、歯周病菌を減らしたり、症状を抑えたりすることは可能です。
歯科医院では、歯周病菌が潜むプラークが溜まる歯石を除去したり、歯と歯の隙間にあるプラークを取り除いたりします。抗生物質を処方してもらうことで、症状も緩和できるでしょう。また、歯周ポケットを意識した正しいブラッシング方法を教えてもらうことで、今後の歯周病の発症リスクを減らせます。
まとめ|唾液を介して歯周病菌はうつる
歯周病は、唾液を介してうつります。食べ物・飲み物のシェアやキス、歯磨き粉の共用などが主な感染経路です。歯周病に感染しないためには、徹底的に感染経路を遮断する必要があります。
ただし、歯周病菌がうつったからといって、必ずしも発症するわけではありません。生活習慣を改善し、定期的に歯科医院のクリーニングを受けることで、歯周病を発症するリスクを下げられます。
当院では、厚生労働省の認可が一部のクリニックにしか認められていないTHP治療によって、歯周病菌の特定を遺伝子レベルで行った上で、歯周病細菌を減らせます。当院の歯周病治療の方法や費用について気になる方は、下記のページをご覧ください。