インプラントのリスクとは?手術中・治療後に起きうる10個のリスクを解説

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こんにちは!大阪 梅田のえみは総合歯科、理事長の加藤直之です。

入れ歯とは違い自分の歯のような感覚で噛むことができ、ブリッジのように健康な歯を削る必要がないインプラント。良い面ばかりに着目されがちですが、インプラントには、神経麻痺や細菌感染などのリスクがあることをご存知でしょうか。

本記事では、手術中や治療後に起こりうるリスクと回避するための対策を解説します。

また、糖尿病や認知症に関するリスクとの関係性についても紹介しているため、インプラント治療を受ける前にリスクを知っておきたいという方は、ぜひ参考にしてみてください。

当院でのインプラント治療に関しては、下記のページで詳細に紹介しています。具体的な治療内容や費用について気になる方は、合わせてチェックしましょう。

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インプラントの手術中に起こる6つのリスクとは?

インプラント治療では、歯茎の切開や骨に穴を開けるといった外科手術を行います。細心の注意と高度な技術が必要であり、トラブルが絶対に起きないとは言えません。手術中に発生し得るリスクは次の6つです。

  • 神経損傷により神経麻痺が起きる
  • 粘膜に傷が付き上顎洞が炎症を起こす
  • 骨結合の失敗により寿命が短くなる
  • インプラントの接合部が露出する
  • 金属アレルギーの症状が発現する
  • 恐怖と緊張により体調が急変する

それぞれ詳しく解説します。

神経損傷により神経麻痺が起きる

経験の少ない医師が執刀すると、神経を損傷し、神経麻痺が起きてしまうケースがあります。インプラントの手術中に神経損傷を起こしてしまう場面は、主に次の3つです。

  • ドリルが神経に当たってしまう
  • インプラントの埋め込みで神経を切ってしまう
  • インプラントが神経に当たってしまう

神経損傷の症状としては、手術をした周辺の箇所が麻痺し、一時的又は永続的に感覚がなくなることがあります。神経が切れてしまった場合には、神経の縫合や移植手術といった事態にも発展しかねません。

参考までに、インプラント手術後の下歯槽神経麻痺の発現率は0.13%~8.5%(※1)と比較的幅が広い傾向です。

※1参考:厚生労働省委託事業「歯科保健医療情報収集等事業」歯科インプラント治療のための Q&A

また、神経損傷のリスクを避ける方法は以下の2つ。

  • 「インプラントの認定資格や学会資格」を持つ歯科医師を選ぶ
  • 執刀実績の多いクリニックを選ぶ

インプラントの手術に失敗し、神経麻痺を引き起こしてしまうのは歯科医師の技術不足が主な原因です。そのため、インプラントの認定資格や学会資格を歯科医師が持っているかを確認しましょう。また、症例数の多さも医師の技術力を測る上で重要な要素といえます。

粘膜に傷が付き上顎洞が炎症を起こす

上顎洞は4つある副鼻腔のうちで最も大きい副鼻腔。上顎洞にインプラントが突き抜けたり、治療時に上顎洞の粘膜を傷つけると、その傷口から上顎洞炎を引き起こす可能性があります。

歯が無くなることで、歯を支える顎の骨の部分が薄くなってくると、上顎洞の底の厚みも減ってきます。その状態でインプラントを骨に埋め込むと、上顎洞まで突き抜ける可能性も上がるのです。

上顎洞炎のリスクを避けるための方法としては、治療前にインプラント埋入に十分な厚みや形状であるかを担当医師と確認しておくことが挙げられるでしょう。

骨結合の失敗により寿命が短くなる

健康な歯は骨と歯肉の中の歯がしっかり結合しているため、基本的に突然取れることはありません。インプラントも同様に、周囲の骨組織と結びつくことによって、インプラントが骨に根付きます。

ところが、次に示すような理由によって骨結合が阻害されると、インプラントは固定されずにぐらついたり脱離してしまいます。

  • インプラントを埋入する位置・角度が不適切である
  • 全身的リスクファクターとなる疾患を患っている

また、骨結合の妨げとなる全身的リスクファクターは大きく分けて「糖尿病」「骨粗鬆症」「貧血」の3つです。(※2)

※2参考:歯科インプラント治療指針

インプラントの骨結合における失敗リスクを避けるには、下記の方法を実施しましょう。

  • ガイドシステムを導入し、インプラントを埋入する位置や角度のシミュレーションを事前に行う
  • 全身的リスクファクターとなる疾患を患っている場合は、手術前のカウンセリングで担当医師に相談する

当院では、シミュレーション通りにインプラントを埋入するために、施術の誤差を最小限に抑えるガイドを導入しています。また、リスクファクターについても手術前のカウンセリングで納得がいくまで相談が可能です。

インプラントの接合部が露出する

インプラント治療におけるアバットメント連結後に、歯を支える骨が減少する(骨吸収)ことが知られています(※3)。

※3参考:インプラントにおけるアバットメント連結と初期の骨吸収

そのため、アバットメントとインプラント体の接合部よりも歯肉が下がってしまうと、接合部の金属が露出してしまいます。特に前歯は、目立ちやすいため、審美性を左右しかねません。

接合部の露出が目立ってしまう理由としては、次の2つが挙げられます。

  • インプラントを埋入する骨の量が少なく骨吸収の影響を受ける
  • 笑顔の上唇のリップラインが高く歯肉が多く見える

そして、インプラントの接合部の露出を避ける方法は、次の2つです。

  • 治療計画の際にリップラインや歯の状態に適した治療方法を相談する
  • 治療前にインプラント埋入のシミュレーションを行う医院を選ぶ

また、当院では患者様にとって何がベストな治療なのかをじっくりと相談して判断します。

もし「インプラントの接合部の露出をどうしても避けたい」という意思があれば、最大限尊重して治療を行います。場合によっては、インプラント治療以外の選択もご提案いたします。

金属アレルギーの症状が発現する

インプラントは金属製のねじを埋め込むため、金属アレルギーをお持ちの方が不安を抱くケースも少なくありません。しかし、インプラント体の金属には人体と親和性が高い「チタン」が使用されているので、基本的に症状が発現する可能性は低いと言えるでしょう。

ただし、あくまで可能性が低いだけであって、絶対に症状が発現しないとは言い切れません。金属アレルギーの発現を避ける方法として、金属を使用しない被せ物を採用している医院を選びましょう。

もちろん、当院では一切金属を使用していない「オールセラミック」を用いた被せ物を採用しています。

恐怖と緊張により体調が急変する

歯科治療で抜歯をする際は、誰でも緊張したり恐怖を抱くものです。インプラント治療では外科手術を伴うため、初めての方はなおさら不安に駆られるでしょう。

特に、疲れが溜まっていたり、睡眠不足の状態で手術を受けると、緊張や恐怖が相まってふらつきや嘔吐を引き起こす可能性があります。

一定のような手術中の体調急変を避ける方法としては、次の2つが有力です。

  • 静脈内鎮静法による麻酔を行う
  • 恐怖や緊張の原因となっている不安を手術前に取り除いておく

静脈内鎮静法は健忘効果が高く、手術中の不安と恐怖が残らないことが特徴となります。うっすら意識はありますが、ほとんど眠っているような状態で手術ができ、当院でも麻酔専門医による静脈内鎮静法を採用しています。

また、手術前に恐怖や緊張の原因となっている不安要素を取り除いておくことも重要です。患者様が感じやすいインプラントの怖さの原因とその対策について詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてチェックしてみてください。

関連記事:インプラントが怖いと言われる8つの理由とは?恐怖を軽減する方法も解説

知っておきたいインプラントの将来的な2つのリスク

手術を乗り切ったら終わりではないのがインプラント。将来的にも次に挙げる2つのリスクが潜んでいます。

  • 歯周病菌に感染する
  • インプラントが脱離する

それぞれ詳しく見ていきましょう。

歯周病菌に感染する

元の歯が上手く磨けずに歯周病になり、結果的に歯を失ってしまった場合、インプラントも同様の状態になってしまう可能性があります。元の歯と同じようにメンテナンスを怠っていると、インプラントの周りに歯周病菌が増殖してしまうのです。

歯周病菌がインプラントの周囲組織で炎症を引き起こす疾患は、次の2種類です。

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上記のような歯周病菌への感染を避けるには、歯科医院で定期メンテナンスを必ず受ける必要があります。当院のように、インプラントのメンテナンスを積極的に行っており、技術力も備えた歯科医院を選びましょう。

インプラントが脱離する

歯の根を支える骨である歯槽骨などの組織が細菌によって炎症を起こしている状態を放置すると、インプラントが動揺してグラついてきます。最悪の場合、インプラントが脱離したり、インプラントを抜かざるを得ない状況になり得るでしょう。

インプラントの脱離を避ける方法としては、インプラント治療後のアフターケアを欠かさず、異常があれば早めに受診するのが最も効果的です

ただ装着したからといって満足せず、充分なアフターケアを徹底してください。

安全性の高いインプラントにおける骨造成の2つのリスク

骨が痩せていて、インプラントを埋入する十分な厚さを確保できなければ、インプラント治療を断る医院もあります。厚さが足りなくてインプラント体が骨を突き抜けてしまったり、インプラントの金属が歯肉から露出する可能性があるからです。

しかし、骨を増やす手術である骨造成を行うことで、インプラント治療が可能になります。

参考までに、当院で採用しているのは、「GBR」「サイナスリフト」「ソケットリフト」といった骨造成術です。

骨造成を行うことで、安全にインプラントの手術を行うことが可能ですが、次のような2つのリスクがあります。

  • 痛みや腫れが強く出る
  • 歯肉切開により細菌に感染する

それぞれ詳しく見ていきましょう。

痛みや腫れが強く出る

骨造成では歯肉を切開したり、他の部位から骨を採取するため、痛みや腫れが強く出る傾向にあります。手術の回数も2、3回以上と複数回にわたるケースが多いのが特徴です。

骨造成による痛みや腫れを避けたい場合は、当院でも採用しているソケットリフトを検討すると良いでしょう。ソケットリフトは、インプラント埋入と同時に行えるため、傷口も小さく済み、比較的身体的負担が小さい骨造成術です。

ソケットリフトとサイナスリフトの違いは次の通りです。

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骨造成(骨移植)が必要になるケースや、骨造成のメリット・デメリットが詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてチェックしてみてください。

関連記事:インプラントでの骨移植とは?治療にかかる費用や3つの手術方法を解説

歯肉切開により細菌に感染する

骨造成では、歯肉を大きく剥いで骨を移植し固定するため、剥いだ部分が唾液中の細菌に感染するリスクがあります。細菌に感染するとインプラント周囲炎となり、せっかく埋入したインプラントが抜け落ちてしまう事態も考えられます。

細菌の感染を防ぐ方法として、術後の清掃が徹底した医院を選びましょう。当院では、細菌感染対策を徹底したオペ室を完備して、安全に治療を行っています。

インプラントのリスクに関するQ&A

最後に、インプラントのリスクに関するよくある質問をご紹介します。

  • インプラントは認知症になるリスクを軽減しますか
  • インプラントは糖尿病の人の感染リスクを高めますか
  • 上顎の奥歯のインプラントはリスクが高いですか
  • 老後にインプラント治療を受けることは可能ですか

それぞれ詳しく見ていきましょう。

インプラントは認知症になるリスクを軽減しますか

インプラントは認知症の発症リスクを軽減することが可能です。歯がない人は、歯が残っている人や入れ歯などで噛み合わせが回復している人と比較して、認知症の発症リスクが最大1.9倍にもなるという報告が挙げられています。(※4)

※4参考:いい歯は毎日を元気にプロジェクト

ちなみに、現在は65歳以上の5.4人に1人が認知症になると言われています。(※5)

歯を失ったまま放置しているのではなく、インプラント治療で噛み合わせを取り戻し、認知症を防ぎましょう。

※5参考:認知症患者はどれくらい?

インプラントは糖尿病罹患者の感染リスクを高めますか

インプラント治療は、糖尿病の患者様の細菌への感染リスクを高めます。

インプラント手術では、歯肉を切開した時に骨が空気に触れることになり、細菌の感染リスクが高まります。通常は、清潔な手術室でインプラント手術が行われるため、感染を引き起こす可能性は極めて低いといえるでしょう。

しかし、糖尿病の患者様は免疫力が落ちているため、細菌に感染しやすくなっています。特に、インプラント周囲炎が発症すると、インプラントの脱落を招く可能性もあります。

上顎の奥歯のインプラントはリスクが高いですか

上顎の奥歯に対するインプラント治療は、失敗するリスクが高いといえます。

上顎の奥歯の付近には上顎洞と呼ばれる空洞があるため、上顎は奥歯にかけて骨が薄い人が多い傾向です。インプラント手術では、埋入するために一定量の骨が必要なので、薄い骨に対して手術を行うと失敗するリスクも高まるでしょう。

インプラントが上顎洞を突き抜けてしまったり、粘膜を傷つけると、上顎洞炎を引き起こす可能性がある点にも注意しなければなりません。

老後にインプラント治療を受けることは可能ですか

老後でもインプラント治療を受けることは可能です。

60歳を超えると、約80%の人が少なくとも1本以上の歯を失っています(※5)。そのため、高齢になればなるほど、インプラント治療の需要は高まることになります。

※6参考:厚生労働省|平成28年歯科疾患実態調査結果の概要

インプラント治療の年齢制限に上限はありません。したがって、老後でもインプラント治療を受けることは可能ですが、次のようなデメリットがあることも忘れないでください。

  • 費用や期間がかかる
  • 外科手術を受ける体力が必要になる
  • 骨の量が少ないと治療を受けられない

まとめ|インプラントのリスク・デメリットを理解して治療を受けよう

インプラントには、手術中のみならず治療後にもリスクが存在します。また、骨の量が少なく、骨造成を行った場合にはさらにリスクは増加するでしょう。しかし、それぞれのリスクにはそれを回避するための方法も存在します。

この記事で紹介したリスクとその回避方法を考慮した上で、インプラント治療を検討しましょう。インプラントのデメリットが詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてチェックしてみてください。

関連記事:インプラントのデメリットとは?年代別・手術回数別の欠点やメリットも解説

また、当院では患者様の意思を尊重したインプラント治療を行っております。ご興味のある方は、ぜひ以下のページをご覧ください。

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この記事を書いた人

加藤 直之

大阪の梅田にあるえみは総合歯科、加藤です。 当院は、歯医者さんの「痛い・怖い・行きたくない」というイメージをなくし、患者様が悩みを相談できてリラックスした状態で治療ができるそんな医院を目指し運営しております。

資格・所属

NPO法人日本歯科予防協会理事/ISOI インプラント認定医/ドライマウス認定医/日本ドライマウス学会会員/日本抗加齢歯学会会員/医療情報技師認定証/ITIインプラント認定/AQBインプラント認定/ザイブインプラント認定/POIインプラント認定/インプラント学会 所属ブローネマルクインプラント認定/SARGONインプラント認定/審美歯科学会認証