歯周病菌は殺菌できる?3つの方法と知っておきたい歯周病治療
こんにちは!大阪 梅田のえみは総合歯科、理事長の加藤直之です。
歯周病の症状があるものの、できれば自宅で対処したいと思う方もいるでしょう。
歯周病は細菌感染であり殺菌できますが、根本的な治療にはなりません。歯周病を治すには歯科医院での治療が必要であり、定期検診やセルフケアでの予防が重要です。
本記事では、歯周病菌の殺菌方法について解説します。また、歯周病の治療や予防方法も紹介するので、症状に悩む方の参考になれば幸いです。
当院では初診時にカウンセリングを行い、口腔内のお悩みなどをお伺いしております。治療の流れに関しては、以下のページをチェックしてください。
目次
歯周病菌は殺菌できるが根本的な治療にはならない
なぜなら、歯周病の原因である歯周病菌は歯に付着した歯垢や歯石の中に存在するため、除去する必要があるからです。
歯周病は原因となる歯周病菌によって、歯茎や歯を支える骨などの周辺組織を破壊する病気です。歯周病によって破壊された周辺組織は、殺菌しても元に戻りません。
歯周病の進行を抑制し症状を改善するためには、歯周病菌の殺菌が重要です。しかし、根本的な治療には歯科医院での適切な治療が必要不可欠であるといえるでしょう。
歯周病の原因について詳しく知りたい方は、こちらの記事もチェックしてください。
関連記事:歯周病の原因は?悪化させる5つのリスクファクターと進行度別の治療方法
歯周病菌を殺菌する3つの方法
- 洗口液・歯磨き粉
- レーザー治療
- 3DSペースト
殺菌方法には自宅でできるセルフケアと、歯科医院で施術を受けるプロケアがあります。それぞれ紹介するので、参考にしてください。
洗口液・歯磨き粉
洗口液や歯磨き粉に殺菌効果を有する薬用成分が配合された商品の場合、使用することで殺菌できます。
代表的な殺菌効果のある薬用成分を以下にまとめました。
[table id=164 /]
バイオフィルムとは細菌が粘着性のある物質で固められ膜状になった状態であり、歯垢は代表的な例です。
外部環境の変化に抵抗力を持つバイオフィルムは、表層の一部を殺菌するだけでは殺菌できません。
代表的な殺菌成分であるIPMPは、バイオフィルムにも浸透し殺菌する効果があります。また、CPCやCHXなどはバイオフィルムに対する殺菌効果は期待できないものの、口腔内全体の浮遊細菌に対しては効果的です。
紹介した殺菌成分は歯周病菌の増殖を抑制し、歯垢の形成を抑制します。殺菌効果以外にもさまざまな薬用成分を含む洗口液や歯磨き粉があるため、選ぶ際には自分に合った商品を選びましょう。
洗口液や歯磨き粉は手軽に取り入れられる殺菌方法ですが、あくまでも補助的な手段です。歯周病を根本的に治療するには、歯科医院での治療が欠かせません。
レーザー治療
レーザー治療による光と熱は、歯周病菌をピンポイントで殺菌する新しい治療法です。
レーザーの光は従来の器具では届かない、深く複雑な形の歯周ポケットにも届くため、より効果的に歯周病菌を殺菌できます。
歯周病により炎症を起こした組織は、レーザーで蒸発させることで歯茎の治癒を促進する効果も期待できます。
レーザー治療は、歯周病治療における選択肢の一つです。従来の治療法に比べて痛みや出血が少なく、短時間で治療が完了するため歯周組織に優しい治療方法といえるでしょう。
歯周病におけるレーザー治療についてはこちらの記事で紹介しているので、参考にしてください。
関連記事:歯周病のレーザー治療とは?進行度別の費用やメリット・デメリットも解説
3DSペースト
3DSペーストとは歯科医院専売の殺菌ペーストで、虫歯の主な原因菌であるミュータンス菌や歯周病菌を直接殺菌できる根本的な予防方法です。
3DSとは「Dental Drug Delivery System(デンタル・ドラッグ・デリバリー・システム)」の略称で、洗口液や歯磨き粉よりも効果が高いといわれています。
口腔内の細菌を殺菌する際は、抗菌・殺菌効果がある薬剤を注入したマウスピースを一定の時間装着します。
マウスピースを使用することで唾液の影響を受けずに虫歯菌・歯周病菌に直接作用するため、効果的な殺菌方法といえるでしょう。
当院では、自費診療であるTHP(トータルヘルスプログラム)治療で必要に応じて使用しております。
歯周病の治療方法5選
- ブラッシング指導
- スケーリング
- SRP(スケーリング・ルートプレーニング)
- 歯周外科処置
- 歯周組織再生療法
歯周病の治療は、歯科医院で歯周病の進行度に合わせて行われます。
歯周病の治療方法に関しては以下の記事でも解説していますので、ぜひチェックしてください。
関連記事:歯槽膿漏の7つの治し方とは?自宅でできる予防法や治療薬の効果も解説
ブラッシング指導
ブラッシング指導は歯周病治療を効率的に進めるためにも、最も重要かつ基本的な治療法の一つです。
歯周病の原因である歯垢は、殺菌しただけでは落とせません。そのため、歯磨きで歯垢を落とす必要がありますが、自己流ではどれほど綺麗に磨いたとしても磨き残してしまいます。
歯科医院では磨き残しを赤く染め出すことで視覚的にチェックしやすくし、患者さんに合った正しいブラッシング方法を指導します。
歯ブラシだけでなく、フロス・歯間ブラシ・ワンタフトブラシなどの補助用具も口腔内に合わせて併用するのがおすすめです。使い慣れない補助用具は、歯科医院で選び方や使い方を指導してもらいましょう。
ブラッシング指導は単に歯磨きの方法を教えるだけでなく、患者さん自身が口腔内を綺麗に保つ意識を高め、セルフケアの必要性を理解してもらうことが重要です。
歯科医院と患者さんが協力して適切な歯磨き習慣を身につけることで、歯周病の予防・改善に効果的に取り組めます。
スケーリング
スケーリング(歯石除去)は歯周病治療で最初に行う基本的な治療方法です。
歯石は歯の表面に付着した歯垢が時間の経過とともに再石灰化して硬くなったもので、歯磨きでは落とせません。したがって、歯科医院では歯に付着した歯垢や歯石を専用の器具であるスケーラーで除去する必要があります。
市販されているスケーラーも見かけますが、歯や歯茎を傷つける可能性があるため、自分で歯石を除去するのはおすすめできません。歯石が付着したら、必ず歯科医院を受診し歯科医師や歯科衛生士に除去してもらいましょう。
軽度の歯周病は、スケーリングを受けることで症状の改善が期待できます。
SRP(スケーリング・ルートプレーニング)
SRPはスケーリング・ルートプレーニングの略称で、歯周ポケット内の歯根面に付着した歯垢や歯石を除去する治療法です。
スケーリング後に歯周ポケットの再測定をし、必要に応じて行われます。具体的には、歯周ポケット内に手用スケーラーを挿入し、歯垢や歯石を除去する処置です。
歯周病は症状が進行するほどポケットが深くなり、スケーリングだけでは歯根面の歯垢や歯石を完全に除去できません。
深い歯周ポケット内の歯石を徹底的に除去するSRPは、歯周組織の再生を促すことで歯周病の進行を抑制し、症状を改善させるのに効果的です。
主に、軽度〜中程度の歯周病は、スケーリングとSRPを受けることで症状の改善が期待できるでしょう。
歯周外科処置
歯周外科処置は患部の歯茎を切開し、歯根面についた歯垢や歯石を除去する処置です。
重度の歯周病は歯周ポケットが深いため、スケーリングやSRPなどの基本的な歯周病治療では歯垢や歯石を落としきれません。
したがって、ポケット内の歯根面を直接見える状態にして徹底的に歯垢や歯石を除去する歯周外科処置は、改善が難しい重度の歯周病に効果的といえるでしょう。
しかし、外科処置を伴うため、治療時間や期間が長くなることや体への負担がかかるのも事実です。
歯周外科処置は重度の歯周病の治療に有効な方法ですが、不安な方はメリットとデメリットを理解したうえで、治療を受けるか担当医に相談しましょう。
歯周組織再生療法
歯周組織再生療法は、歯周病によって失われた歯槽骨などの歯周組織を再生させる治療方法です。
歯周病が進行すると、歯槽骨と呼ばれる歯を支える骨が吸収してしまいます。歯周組織再生療法は、失われた歯槽骨を再生させ、歯を支える機能を取り戻すことが目的です。
具体的には、歯周外科処置と同様に歯茎を切開し、患部に歯周組織を再生させる薬剤を注入します。
ただし、治療の可否は歯科医師の判断に委ねられるため、全ての歯周病症例には適応していません。また、大半のケースでは自費診療で行われるため、歯科医院によって費用が異なります。
歯周組織再生療法は、失われた歯周組織を取り戻す有効な治療方法です。しかし、保険適用外であるなどのデメリットもあるため、担当医としっかり話し合ったうえで治療するか判断しましょう。
歯周病の予防方法3選
- 歯周病ケアを意識した磨き方
- 補助用具の使用
- 定期検診の受診
歯周病は歯科医院での治療だけでなく、セルフケアによる予防が欠かせません。
予防方法について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
関連記事:歯周病を予防する10の方法とは?歯周病予防に役立つアイテムも紹介
歯周病ケアを意識した磨き方
歯周病菌は歯周ポケット内の歯垢や歯石に生息するため、ポケット内に汚れが溜まる前に除去する必要があります。
具体的には、歯と歯茎の境目にブラシの毛先を45度に当て、小刻みに動かすバス法という磨き方がおすすめです。
また、就寝中は唾液の分泌が減り口腔内に潜む細菌が繁殖しやすくなるため、就寝前は念入りに歯磨きしてください。
歯周病の症状改善と予防のためには、自宅でのセルフケアが必要不可欠です。正しい磨き方ができているか不安な方は、歯科医院でブラッシング指導を受けましょう。
補助用具の使用
歯ブラシだけで落とせない汚れには、以下の補助用具を併用するのがおすすめです。
- フロス
- 歯間ブラシ
- ワンタフトブラシ
特に、歯と歯の汚れは歯ブラシだけでは落とせません。フロス(糸ようじ)や歯間ブラシを使用して効率良く清掃しましょう。
フロスは歯と歯の接触する面の清掃に適した、糸状の清掃用具です。一方、歯間ブラシは歯と歯の隙間を清掃するのに適した、ブラシ状の清掃用具です。
ほかにも、歯ブラシでは届きにくい部分の清掃に適しているワンタフトブラシは、親知らずなどの清掃に向いています。
補助用具は、歯磨きの度に使用する習慣をつけるのが理想的です。どの補助用具が適しているか分からない方は、歯科医院で相談しましょう。
定期検診の受診
歯周病や虫歯の早期発見・早期治療には、定期検診が重要です。
なかには、症状がないからと定期検診を受けない方もいるでしょう。しかし、歯周病は症状なく進行するため、自覚症状が出たときには進行していることも珍しくありません。
また、歯周病や虫歯の治療が終わった健康な口腔内を維持するには、セルフケアだけでは不十分です。
治療後は口腔内の状態に合わせて、3〜6ヶ月ごとに定期検診とメインテナンスを行うことをおすすめします。
歯周病菌に関するよくある質問
- 歯周病菌は市販品でも殺菌できるか
- 歯周病菌の殺菌はイソジンでも可能か
- 歯周病菌の殺菌に次亜塩素酸水は効果があるのか
- 歯周病にマウスウォッシュは逆効果なのは本当か
それぞれ解説するので、参考にしてください。
歯周病菌は市販品でも殺菌できますか?
殺菌成分が配合された洗口液や歯磨き粉であれば、市販品でも殺菌できます。
ただし、歯の表面に歯垢や歯石が残っていると、生息する歯周病菌は殺菌できません。したがって、歯垢は歯磨きで落とし、こびりついた歯石は歯科医院でスケーリングを受ける必要があります。
洗口液や歯磨き粉による殺菌効果は期待できますが、あくまで補助的なアイテムであると理解しておきましょう。
殺菌成分として効果があるのは、以下のとおりです。
- IPMP
- CPC
- CHX
殺菌成分として代表的なIPMPは、細菌が膜状に集まったバイオフィルムにも浸透し、殺菌できる成分です。
また、CPCやCHXはバイオフィルムの殺菌はできないものの、口腔内に浮遊する細菌に対して効果があります。
洗口液や歯磨き粉を探す際は、IPMPやCPC・CHXが含まれた商品がおすすめです。
歯周病菌の殺菌はイソジンでも可能ですか?
風邪予防を目的に使われるイソジンは、口腔内の細菌全般に対して殺菌効果があります。
ただし、ポピドンヨードが主成分であるイソジンに対して、まれにアレルギーを持つ方がいるため使用には注意してください。また、ヨードは甲状腺ホルモンに関係するため、甲状腺疾患がある方も注意しましょう。
ほかにも、イソジンの匂いに抵抗がある方や、使用後に少し着色するのを気にする方がいるのも事実です。
体質的に問題がなくても、使用感が気になる方は自分に合った洗口液を使うことをおすすめします。洗口液を選ぶのに迷うようでしたら、歯科医院で相談しましょう。
歯周病菌の殺菌に次亜塩素酸水は効果がありますか?
殺菌科の一種である次亜塩素酸水は、歯周病菌の殺菌だけでなく体の免疫機能にも作用し、自然治癒力を高める働きを持ちます。
次亜塩素酸水の効果は以下のとおりです。
- バイオフィルムの除去
- 殺菌効果
- 消炎効果
次亜塩素酸水はバイオフィルムを剥離しやすくし、殺菌・消炎効果を高める効果があります。
ただし、塩素系漂白剤である「次亜塩素ナトリウム」と名前が似ており、混同しやすいため間違えないように注意してください。
次亜塩素酸水は食塩や塩酸の水溶液を電気分解したもので、厚生労働省では「体に安全な食品添加物」と指定されています。(※参考 厚生労働省 次亜塩素酸水)
市販品のなかには正しい製法で作られていない商品もあり、次亜塩素酸ナトリウムを薄めたものや塩酸・クエン酸などを混ぜたものもあります。
体に悪影響を及ぼす可能性もあるため、使用する際には成分表などを良く確認してください。
歯周病にマウスウォッシュは逆効果と聞きましたが本当ですか?
マウスウォッシュに含まれる薬用成分には歯周病に効果的な成分が配合されています。
ただし、マウスウォッシュのなかにはアルコールが含まれている商品もあり、歯茎から出血するような炎症が強い場合にはかえって刺激になることがあるのも事実です。
炎症が強い場合は、歯科医院を受診しましょう。そのうえで、マウスウォッシュを使用したい方は、低刺激タイプやノンアルコールの商品がおすすめです。
マウスウォッシュには歯周病を予防する効果がありますが、治せまません。根本的に治すには、歯科医院での治療が必要であると理解しておきましょう。
まとめ|歯周病菌は殺菌できるが治療やセルフケアが必要不可欠
歯周病菌はさまざまな方法で殺菌できますが、根本的な原因となる歯垢や歯石を除去する必要があります。
健康的な口腔内を維持するには、歯科医院での治療や定期検診・徹底的なセルフケアが欠かせません。
「症状がないから」と受診を後回しにしがちですが、歯周病は症状なく進行します。手遅れになる前に受診しましょう。
当院では、初診時に歯周病や虫歯の検査を行い、状態に合わせて治療計画を立てていきます。治療に関するご希望などありましたら、お気軽にご相談ください。