歯周病と歯槽膿漏の違いは?症状の比較や5つの治療方法

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こんにちは!大阪 梅田のえみは総合歯科、理事長の加藤直之です。

「歯周病」や「歯槽膿漏」と良く聞くものの、違いが分からない方もいるでしょう。

歯周病は、歯肉炎・歯周炎・歯槽膿漏の総称です。なかでも、歯槽膿漏は重度歯周病のことを指し、歯茎の腫れだけでなく膿が出たり歯がぐらついたりといった症状が伴います。

本記事では、歯周病と歯槽膿漏の違いを解説します。併せて、治療方法や予防方法も紹介するので、歯茎に症状を感じている方の参考になれば幸いです。

当院では、従来の歯周病治療だけでなく、根本的歯周病治療としてTHP(トータルヘルスプログラム)治療を取り入れております。興味のある方は、以下のページもご覧ください。

歯周病と歯槽膿漏の違いとは?歯肉炎との比較と症状

歯周病は、歯肉炎や歯周炎・歯槽膿漏の総称です。そのうち、歯槽膿漏は歯周炎のなかでも、最も症状が進んだ状態を指します。

歯周病は進行度の違いにより、以下のとおりに分類されます。

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それぞれ進行度別に詳しく解説するので、参考にしてください。

歯肉炎

歯肉炎は歯周ポケットが2〜3mmで、炎症は歯茎だけに限定されている状態です。

歯周病の症状には、以下2つが挙げられます。

  • 歯茎が赤く腫れている
  • 歯磨きの際に出血する

歯茎だけに炎症がある歯肉炎は、歯茎の腫れや歯磨き時の出血が主な症状です。

歯垢や歯石が歯と歯茎の隙間に入り込むと、歯周病が繁殖し炎症を起こします。治療するには、歯科医院で歯垢や歯石を除去し歯磨き指導を受けましょう。

日々の歯磨きでは歯垢をしっかり除去するために、正しいブラッシング方法が重要です。

歯肉炎を放置すると徐々に進行し、歯槽膿漏へと悪化します。しかし、歯周病の初期段階である歯肉炎は、スケーリング(歯石除去)や丁寧な歯磨きでの改善が見込めます。

早期発見・早期治療が重要ですので、少しでも症状を感じるようなら歯科医院を受診しましょう。

歯周病の初期症状に関しては、こちらの記事も参考にしてください。

関連記事:歯周病の初期症状とは?5段階の進行度別の症状や治療・予防法も解説

軽度歯周炎

軽度歯周炎は歯周ポケットが3〜5mmで、歯肉炎から歯周炎へと進行し歯槽骨の吸収が始まります。

軽度歯周炎の症状は、以下のとおりです。

  • 歯茎が軽く腫れている
  • 軽い出血がある
  • 歯茎が下がる

軽度歯周炎は歯肉炎の症状に加え、歯を支える歯槽骨がわずかに吸収され歯周ポケットが深くなります。

歯科医院ではスケーリングやSRP(スケーリング・ルートプレーニング)と呼ばれる歯垢と歯石の徹底的な除去を行い、歯周ポケット内の環境を改善します。

症状の改善には歯科医院での治療に加え、正しいブラッシングが重要です。

中等度歯周炎

中等度歯周炎は歯周ポケット4〜7mmで、歯槽骨が2分の1ほど吸収された状態です。

中等度歯周炎は、以下の症状が現れます。

  • 歯茎が腫れている
  • 出血がある
  • 冷たいものがしみる
  • 歯がぐらつく
  • 口臭が出る
  • 歯茎から膿が出る

中等度歯周炎になると、炎症が歯槽骨などの歯周組織まで広がり少しずつ破壊されます。歯周ポケットは深くなり、軽度歯周炎の症状に加え歯の動揺や口臭・膿が出ることも少なくありません。

中等度歯周炎はセルフケアでの改善が難しく、スケーリングとSRPに加え歯周外科処置が必要になる場合もあります。

歯周外科処置とは、患部の歯茎を切開し歯周ポケット内の歯垢や歯石を徹底的に除去する方法です。歯周外科処置は体に負担がかかるだけでなく、治療時間や来院回数も増えてしまいます。

治療が億劫に感じるかもしれませんが、放置するとさらに悪化し、歯が抜ける可能性が高くなります。中等度歯周炎と診断された場合は、早期に専門的な治療を受けましょう。

重度歯周炎(歯槽膿漏)

重度歯周炎は歯周ポケットが6〜7mm以上で、歯槽骨が半分以上吸収された状態です。

重度歯周炎は歯槽膿漏とも呼ばれており、以下の症状が挙げられます。

  • 歯がぐらつく
  • 歯茎が下がる
  • 硬いものが噛みにくくなる
  • 口臭が強くなる
  • 出血する
  • 歯茎から膿が出る

重度歯周炎になると、歯槽骨の吸収が大きくなり歯がぐらつきます。また、歯槽膿漏の「膿が漏れる」の文字どおり、膿が出て口臭が強くなるのが特徴です。

治療にはスケーリングやSRP・歯周外科処置が必要になる場合もありますが、抜歯になることも少なくありません。

歯槽膿漏の原因

歯槽膿漏の直接的な原因は歯垢ですが、炎症を悪化させる要因は以下のとおりです。

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歯周病菌は、歯周ポケットに歯垢が溜まったままだと増殖します。なかでも、歯垢は歯と歯の間などのケアしにくい場所に溜まります。

ほかにも、歯垢の溜まりやすい口腔内の環境や、歯茎の抵抗力を低下させる生活習慣は歯槽膿漏のリスクを高めることを理解しておきましょう。

歯槽膿漏で歯を失うリスクを低くするためにも、可能なら当てはまる要因を改善することをおすすめします。

歯槽膿漏は治る?5つの治療法

歯槽膿漏の治療前にはポケット測定やレントゲン撮影などで検査し、歯周病の進行度合いに応じて以下の治療を行います。

  • スケーリング
  • SRP(スケーリング・ルートプレーニング)
  • 歯周外科処置
  • 歯周組織再生療法
  • 抜歯

症状が重症化している歯槽膿漏でも基本的な治療からスタートし、徐々にステップアップします。

治療が効率的に進められるように、随時ブラッシング指導が必要です。

歯槽膿漏の治療方法に関しては、こちらの記事で詳しく解説しているので参考にしてください。

関連記事:歯槽膿漏の7つの治し方とは?自宅でできる予防法や治療薬の効果も解説

スケーリング

スケーリングは、スケーラーや超音波スケーラーという専用の器具で歯の表面に付着した歯垢と歯石を除去する処置です。

歯の表面に付着した歯石は、歯垢が石のように硬くこびりついて自分での歯磨きでは除去できません。

スケーリングは基本的に痛みは伴いませんが、歯茎が下がっているなどの口腔内の状態によってはしみることもあります。処置後は数日しみる場合がありますが、一時的なもので症状は徐々に落ち着きますので安心してください。

市販品のスケーラーを使うと歯茎や歯の表面を傷つける恐れがあるため、必ず歯科医院で治療を受けましょう。

SRP(スケーリング・ルートプレーニング)

SRP(スケーリング・ルートプレーニング)は、歯周ポケット内に溜まった歯垢や歯石を除去する処置です。

スケーリングだけでは、深くなった歯周ポケット内の歯垢や歯石までは落とせません。したがって、歯周ポケット内にスケーラーを挿入し、歯の根に付着した歯垢や歯石を除去します。

ポケット内に直接スケーラーを入れるため出血や痛みを感じることもありますが、必要に応じて局所麻酔を行います。

局所麻酔をすれば、痛みを感じる心配はありません。

歯周外科処置

歯周外科処置は、歯茎を切開して歯根を露出させた状態で歯垢や歯石を除去する処置です。

基本的な歯周病治療であるスケーリングやSRPでの症状改善が難しい場合に、必要に応じて行います。

特に、中程度〜重度歯周炎ではポケットが深く、SRPでは全ての歯垢・歯石を除去できません。そのため、患部の歯茎を切開し、歯根に付着した歯垢・歯石を直接見えるようにして徹底的に清掃します。

局所麻酔を用いるため、術中の痛みはほぼ感じませんが、体への負担や治療時間・通院回数は増えてしまいます。

治療への不安がある方は、担当医に相談しましょう。

歯周組織再生療法

歯周組織再生療法は、歯周病により失われた歯槽骨などの歯周組織を再生させるための処置です。

具体的には、歯周外科処置と同様に歯茎を切開して歯根に付着した歯石を除去し、歯周組織を再生させる薬剤を注入します。

歯周組織再生療法は、全ての症例で適応になるわけではありません。また、不十分な歯磨きや喫煙は術後の経過に大きな影響を与えるため、術前術後の徹底した管理が重要です。

歯周組織再生療法は、ほとんどの歯科医院で自費診療として扱っています。治療の可否だけでなく、費用や方法などの説明もしっかり受けましょう。

当院でも、必要に応じて歯周組織再生療法を実施しております。

抜歯

歯周病の治療を受けても改善が見られない場合は、抜歯することがあるのも事実です。

特に、歯槽膿漏は重度の症状であるため、治療を受けても改善が見られないケースもあるでしょう。

抜歯すると、入れ歯・ブリッジ・インプラントで噛み合わせを戻す必要があります。それぞれの方法にメリット・デメリットがあるため、理解したうえで治療法を決定しなければなりません。

抜歯後の治療方法について不明点などある方は、担当医に相談しましょう。

歯槽膿漏の予防法3選

歯槽膿漏の予防法は、以下3つです。

  • 歯磨き方法を見直す
  • 定期的なメンテナンスを受ける
  • 生活習慣を見直す

歯槽膿漏によって破壊された歯周組織は元に戻りません。そのため、早期治療と予防が重要です。

歯周病の予防についてはこちらの記事で詳しく解説しているので、ぜひチェックしてください。

関連記事:歯周病を予防する10の方法とは?歯周病予防に役立つアイテムも紹介

歯磨き方法を見直す

歯周病や歯槽膿漏を予防する基本的な方法は、原因となる歯垢を口腔内に残さないように歯磨き方法を見直すことです。

歯の表面だけでなく、歯と歯茎の境に毛先を45度に当て、2〜3mmほどに小刻みに動かしましょう。また、前歯の裏側や凹凸には、ブラシを縦にして1本ずつ磨くと効果的です。

歯ブラシだけでなく補助用具も使用すると、さらに効率良く磨けます。

例えば、歯同士の接触点にはデンタルフロスがおすすめです。使い慣れない方は、Y字の商品が使いやすいでしょう。

歯と歯の間には歯間ブラシが効果的で、奥歯に使うならL字型の商品が良いでしょう。

歯磨き粉や洗口液は、歯周病予防に効果がある殺菌成分や抗炎症成分が含まれるものをおすすめします。

磨き方やどのアイテムを選択するのか悩む方は、歯科医院でも指導してくれるので相談しましょう。

歯周病菌が殺菌できるのか詳しく知りたい方は、こちらの記事もチェックしてください。

関連記事:歯周病菌は殺菌できる?3つの方法と知っておきたい歯周病治療

定期的なメンテナンスを受ける

自宅で丁寧なセルフケアをしても磨き残しが出る部分があるため、歯科医院での定期的なメンテナンスが必要です。

メンテナンス時は口腔内の検診を行ない、自覚症状がない初期の虫歯や歯周病も早期発見・治療ができます。

ほかにも、必要に応じてブラッシング指導や生活習慣のアドバイスが受けられることも定期的なメンテナンスのメリットでしょう。

受診の目安は3〜6ヶ月に1回、歯科医院を受診するのがおすすめです。

生活習慣を見直す

普段の何気ない生活習慣は歯周病・歯槽膿漏を悪化させる原因となるため、見直しましょう。

例えば、疲れやストレスは体の免疫力を低下させ、歯槽膿漏が悪化しやすくなります。また、喫煙は免疫機能を低下させるうえ、血行不良から歯周組織の修復機能も低下させるため、治療しても治りにくくなります。

そのため、できる部分から生活習慣を改善してください。

ほかにも、歯周病菌への抵抗力を高められる、バランスの取れた食事も重要です。抗酸化作用があるビタミンCや、血行促進作用があるビタミンEがおすすめです。

ただし、細菌の餌となる糖分は歯垢を作る原因となるため、摂りすぎに注意しましょう。

歯周病と歯槽膿漏に関するよくある質問

歯周病と歯槽膿漏に関して、よくある質問を以下にまとめました。

  • 歯槽膿漏は若い人でもなるのか
  • 歯周病が手遅れな場合はどのような症状か
  • 歯周病や歯槽膿漏は歯磨き粉でも治るのか

それぞれ解説するので、参考にしてください。

歯槽膿漏は若い人でもなりますか?

歯槽膿漏は「高齢者がかかる病気」と思われがちですが、近年では若い人にも歯周病患者や予備軍が増えています。

10〜20代といった若い人でも、歯茎に何らかの症状を感じている人は5割以上と言われています。(※)

若い人が歯槽膿漏になる原因は、歯周病には自覚症状がほとんどなく悪化しても気づきにくい特徴によるものでしょう。

進行して症状が出る頃には自然に抜けたり、抜歯が必要になったりするケースも珍しくありません。

また、歯周病は口腔内の環境だけでなく、以下の生活習慣が影響します。

  • 喫煙の習慣がある
  • 間食する
  • 噛む回数が少ない
  • ストレスが多い

当てはまる方は、歯周病のリスクが高いため定期検診などでチェックを受けることをおすすめします。

若年層の歯周病に関して詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。

関連記事:歯周病は20代でもかかる?3つの原因と放置することで起こりうるリスク

※参考 厚生労働省 歯周病罹患状況及び自治体等における対策の状況を踏まえた今後の歯周病予防対策について

歯周病が手遅れな場合はどのような症状ですか?

歯周病が手遅れである症状は、以下のとおりです。

  • 歯茎が腫れて膿が出る
  • 口臭が強くなる
  • 歯がぐらつく

歯周病が進行し炎症が強くなると、歯茎はぶよぶよと腫れ、膿が漏れるようになります。

また、ポケット内で歯周病菌が作り出した臭いの原因物質や、出血・膿の臭いも重なるため複雑で強い口臭を感じるようになるでしょう。

ほかにも、重度の歯周病では歯槽骨の吸収が大きく、支えを失った歯は大きくぐらつくようになります。主に、噛むときに痛みを感じますが、放置するとさらに進行し自然に抜け落ちることも珍しくありません。

歯周病は手遅れな状態になると治療が難しくなるため、初期のうちに早期発見・治療できるよう早めに受診しましょう。

歯周病の進行については、こちらも記事もチェックしてください。

関連記事:歯周病はどのように進行する?歯周病になりやすい人の特徴も解説

歯周病や歯槽膿漏は歯磨き粉で治りますか?

歯周病や歯槽膿漏は、歯磨き粉だけでは原因となる歯垢を落とせないため治せません。

なかには「歯磨き粉で治った」と感じる方もいますが、歯磨き粉に含まれる薬用成分によって一時的に症状が軽減しているためでしょう。

歯槽膿漏のような進行した状態を治すには、歯科医院で専門的な治療を受ける必要があります。しかし、失った歯周組織は元の状態には戻せないため、症状の改善や進行予防が治療のゴールになるのが事実です。

とはいえ、歯周病の進行予防効果がある歯磨き粉は、丁寧に歯磨きをすることで効果を発揮するでしょう。

まとめ|歯槽膿漏に進行しないよう早めに受診しよう

歯槽膿漏は重度歯周炎のことを指し、歯茎の腫れや排膿などの症状を伴います。

歯槽膿漏では完治するのが難しいため、進行する前に早期発見・治療することが重要です。そのためにも、歯科医院で定期検診やメンテナンスを受けましょう。

当院では、治療後に患者さんの状態に合わせたメンテナンスをご提案しております。不安や疑問などありましたら、お気軽にご相談ください。

この記事を書いた人

加藤 直之

大阪の梅田にあるえみは総合歯科、加藤です。 当院は、歯医者さんの「痛い・怖い・行きたくない」というイメージをなくし、患者様が悩みを相談できてリラックスした状態で治療ができるそんな医院を目指し運営しております。

資格・所属

NPO法人日本歯科予防協会理事/ISOI インプラント認定医/ドライマウス認定医/日本ドライマウス学会会員/日本抗加齢歯学会会員/医療情報技師認定証/ITIインプラント認定/AQBインプラント認定/ザイブインプラント認定/POIインプラント認定/インプラント学会 所属ブローネマルクインプラント認定/SARGONインプラント認定/審美歯科学会認証