歯周病はどのように進行する?歯周病になりやすい人の特徴も解説
こんにちは!
大阪 梅田のえみは総合歯科 理事長 加藤直之です。
「歯周病が進行している気がする」
「そもそも歯周病はどれくらいになったら手遅れになるのかを知りたい」
歯周病の進行が気になって、上記のように悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
歯周病は、軽度なうちは自覚症状が起きにくいと言われており、本人が気づかないまま進行していく恐れがあります。
そこで本記事では、歯周病がどのように進行していくのかについて解説します。
そして歯周病になりやすい人の特徴と歯周病の進行を止める対策法についても紹介するので、「歯周病の進行を防いで、健康な歯を保ちたい」という方は、ぜひ参考にしてみてください。
なお以下のページでは、当院の歯周病治療のシステムを記載しているので、ぜひご覧ください。
目次
歯周病は静かに進行していく病気
歯周病は、「静かに進行していく病気」と言われていて「サイレント・ディシーズ(静かな病気)」とも言われているほど、自覚症状が少なく進行に気づきにくいとされています。
例えば自覚症状が少ないため、「歯がグラグラしてきた」と気づいて歯科医院で診てもらったら「抜歯するしかない」と言われるケースがあるほど。
歯周病が恐ろしいとされているのは、「歯周病が日本人の歯を失う原因の第1位」であるためです。
歯周病に対する特効薬はなく、完治するのは難しい病気だとされており、糖尿病・心臓疾患・認知症・低体重出産などにも影響が及びます。
このような全身疾患を予防・進行させないためには、歯周病のコントロールがとても重要です。
そして歯周病は、感染症の病気で新型コロナウイルス・インフルエンザ・HIV(エイズ)と同じように、人から人へと感染します。
感染源となるのは、お箸の使いまわし・キス・飲料水の回し飲みなどでも簡単に感染し、日本人の30代以上では、3人に2人が感染していると言われているのです。
歯周病の感染についてさらにくわしく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
関連記事:歯周病はうつるのか?5つの感染経路や発症を予防するための対策も紹介
歯周病の進行度は4段階に分かれている
ここからは歯周病がどのように進行していくのかを、以下の流れで解説します。
- 歯肉炎
- 軽度の歯周炎
- 中等度の歯周炎
- 重度の歯周炎
それぞれの歯周病の特徴が理解できるように、チェックしていきましょう。
1.歯肉炎
歯肉炎は炎症が歯茎のみに限られていて、他の歯周組織(歯槽骨・セメント質・歯根膜)は健康な状態です。
実際に自覚症状はほとんどなく、歯茎の見た目が赤くなって炎症を起こしています。
歯茎が腫れた状態を放置すると、歯周ポケット(歯と歯茎の溝)が深くなり、歯周ポケット内に残った歯垢や歯石を除去するのが難しくなります。
そのため、この歯肉炎の段階で歯垢や歯石を除去して健康な歯茎に戻すことが、歯周病を進行させないようにするためには、とても大切です。
2.軽度の歯周炎
軽度の歯周炎になると、歯茎の発赤に加えて歯槽骨(歯を支える骨)が溶け始めます。歯茎からの出血や腫れなどの症状が出てくることもありますが、日常生活に支障をきたすほどではありません。
しかし軽度の歯周炎を放置すると歯周ポケットはさらに深くなっていって、歯槽骨もどんどん深くなっていき炎症がさらに広がっていきます。
そのためこの段階で、早めに歯周治療を行うことが、歯周組織の破壊を食い止めることができます。
3.中等度の歯周炎
中等度の歯周炎になると、さらに歯周ポケットが深くなり歯槽骨の破壊が進みます。
この段階あたりから以下のような自覚症状が強く現れ始めます。
- 歯茎からの出血
- 歯茎の腫れ
- 歯の動揺
中等度の歯周炎になると、歯周治療を行っても歯周病の完治が難しくなり、もし歯周治療を行ったとしても「歯根の露出」など他の症状が出ることもあります。
そしてこの状態を放置すると、さらに歯周組織の破壊が進み、重度の歯周炎へ進行してしまうのです。
4.重度の歯周炎
重度の歯周炎になると、歯槽骨が半分以上溶けて、さらに歯の動揺が強くなります。そのためしっかり噛むことが難しくなり、以下のような症状が出ることもあります。
- 歯が横にぐらつくだけでなく、縦にも浮き沈みする
- 歯が移動している気がする
- 歯茎が痛い
- 口臭がひどい
重度になると、歯科治療も抜歯以外に選択肢がなくなってしまいます。そして、歯槽骨の破壊・吸収が余儀なくされるため、抜歯後のインプラントができないことも。
「抜歯以外に選択肢がない」とならないように、定期的に歯科医院で歯周病の検査を受けて、自身の歯茎の状態を知ることがとても大切です。
なお当院では、患者さまそれぞれの歯周病の状態に合わせた歯周治療のプランをご提案しています。
歯周病が進行しやすい人 の特徴5つ
次に歯周病が進行しやすい人の特徴を解説します。
- 妊娠中の人
- 糖尿病の人
- 喫煙している人
- 歯磨きが行き届いていない人
- 歯並びが悪い人
それぞれの特徴が理解できるように、くわしく見ていきましょう。
妊娠中の人
妊娠中の人は、心身ともにさまざまなトラブルが起こりやすく、特に妊娠初期はホルモンの影響によりお口の環境が変化しやすいです。
そしてつわりがあるため、ブラッシング時に気持ち悪くなり清掃が困難になることも。歯周病や虫歯といったお口のトラブルが発生し、進行しやすいため、特に注意しましょう。
糖尿病の人
糖尿病による血糖値の高い状態が続くと、歯茎に炎症を起こしやすくするのと同時に、歯周病の進行を早めてしまうと言われています。
さらに糖尿病の人は、そうでない人よりも細菌感染を起こしやすかったり、傷の治りが遅くなることも知られています。これは、歯周病による歯茎の炎症そのものが、糖尿病を悪化させてしまうためです。
以下の記事では、糖尿病も含めた全身疾患と歯周病の関連性について記載しているので、合わせて参考にしてみてくださいね。
関連記事:インプラントは糖尿病でもできる?全身疾患との関係についても解説
喫煙している人
喫煙はストレスや糖尿病とともに、歯周病の重要な危険因子だとされています。一般的に知られる歯周病菌よりも、重度の喫煙のほうが、歯周病の進行に影響すると言われているほどです。
喫煙することで、口内に与える影響は以下の通りです。
- タバコに含まれるニコチンによって口腔ガンや色素沈着を引き起こす
- 歯茎の中の血管が収縮し血液の流れが悪くなって歯周病菌の動きが活発になる
- 白血球が減少して、歯周病菌と戦う機能が少なくなる
そして「歯周病特有の歯茎からの出血」も、喫煙をすると少なくなるため、自覚症状がなく、自身が歯周病だということが気づきにくくなります。
歯磨きが行き届いていない人
歯周病は歯垢(歯周病菌の集まり)が原因で発症し、進行します。
そのため歯磨きで歯垢がしっかり除去できていないと、歯周病のリスクが高まってしまいます。
歯周病は、高血圧や糖尿病と同じように生活習慣病のため、日々の生活習慣が大切です。「歯科医院で定期的に診てもらっていても、普段の歯磨きができていないとほとんど意味がない」と言っても過言ではありません。
歯並びが悪い人
歯並びが悪いことも、歯周病を進行させてしまう大きな要因です。歯と歯が重なっている部分があると、歯垢が残りやすいからです。
歯並びが悪い人はブラッシングはもちろん、フロスや歯間ブラシなどのデンタルグッズを使用して、歯と歯のあいだの歯垢をよりていねいに除去する必要があります。
一番の解決策としては、歯列矯正を行って歯並びや噛み合わせを整えることです。
歯周病の進行を止める予防対策3つ
ここからは、歯周病の進行を止める予防対策を紹介します。
- ていねいなセルフケアを行う
- 歯科医院で定期検診を受ける
- 生活習慣を見直す
「自分は歯周病が進行しているかも」と心当たりのある方は、ぜひ参考にしてみてください。
ていねいなセルフケアを行う
ここまでお話したように、歯周病の原因である歯垢を、セルフケアによって日々除去していくことがとても大切です。特に、歯ブラシを使用したブラッシングは、基本中の基本。
「歯磨きの正しい仕方が分からない」、「どんな歯ブラシを使えばよいのか相談したい」と悩んでいる方は、歯科医院で正しいブラッシング指導を受けれます。
「自分で磨き残しの状態をしっかり確認したい」という方は、自宅で使える市販の「歯垢の染め出し液」なども活用すると良いでしょう。染め出し液は、ドラックストアなどでも取り扱っているところが多いです。
セルフケアについてくわしく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。
関連記事:歯周病の治し方は?自宅での歯磨きでは治せない理由と3つの予防方法
歯科医院で定期検診を受ける
セルフケアに加えて、歯科医院で定期検診を受けることも意識しましょう。歯周病の初期の状態では、自覚症状が起きにくいことが多いからです。
「気づいたら歯周病が重度に進行していた」とならないためにも、定期検診を受けて、歯周病を早期発見することがとても大切です。歯垢が付いた状態を放置すると、歯ブラシで落とせない歯石になります。
歯石は直接、歯周病の原因にはなりませんが、表面のざらつきが原因で、新たに歯垢が付きやすくなります。セルフケアで落としきれない歯石などの口内の汚れは、歯科医院で定期的なクリーニングを受けて除去してもらいましょう。
生活習慣を見直す
「歯周病は生活習慣病」と言われているように、生活習慣を見直すことで歯周病の進行を食い止めることも可能です。
身体の免疫力が落ちると、お口の中のトラブルが起きやすくなるため、以下のことに気をつけましょう。
- 疲れ
- ストレス
- 食生活
- 飲酒
- 喫煙
特に喫煙はストレスや糖尿病とともに歯周病の危険因子だと言われているため、お口のことだけでなく、身体のことも考えて禁煙を検討してみてください。
歯周病の進行に関するQ&A
最後に歯周病の進行についてよくある質問をご紹介します。
- 歯周病はどのような症状が出たら手遅れですか
- 歯周病はみんな同じように悪化しますか
- 歯周病のかかりやすさに男女差はありますか
疑問が解決できるように、くわしく見ていきましょう。
歯周病はどのような症状が出たら手遅れですか
手遅れとなるのは、重度の歯周病によって歯茎と顎の骨がボロボロに破壊されている状態です。この状態になると、抜歯以外の選択肢がなくなることが多いです。
歯周病は進行するときに、歯槽骨を溶かしていく病気のため、重度になると歯が動揺したり、噛めなくなったりすることがあります。
ただし、「歯が動揺しているから必ずしも抜歯になる」というわけではありません。動揺している歯を接着剤で止めて、経過を診ていくこともあります。歯に動揺がある場合は、歯科医院で早めに相談してみましょう。
歯周病はみんな同じように悪化しますか
歯周病の進行のスピードは、一人ひとり異なります。1970~1985年の15年間、スリランカで調査した研究結果でもそのことが立証されています。
調査対象は、歯周治療の知識があまりなく、歯磨きもできていない人々です。15年間のあいだに81%は進行がゆっくりで、ほとんど進行していない人も11%見られました。
残りの8%の人は進行が非常に速く、20代で歯が抜け始め40代で全て歯を失った人もいたのです。
このように歯周病の進行に個人差があるのは、歯周病の原因が1つではないためだと考えられます。
歯周病のかかりやすさに男女差はありますか
女性が特に歯周病にかかりやすいと言われています。それは、歯周病に女性ホルモンが大きく関わっているからです。
歯周病菌の中には女性ホルモンを食べて増殖する細菌が存在しているため、女性ホルモンが増えるとその歯周病菌も増殖します。
特に、妊娠中は女性ホルモンの分泌量が増加します。歯周病菌が増えることに加え、つわりで歯磨きがしにくかったり、食事の回数が増えたりすることで、お口の中の環境が悪化しやすくなるのです。
重度の歯周病は、早産や低体重児の要因にもなるため、いつも以上にオーラルケアに注意することが大切です。
まとめ|歯周病は気づかないあいだに進行している恐れがある
歯周病は、進行しないと自覚症状が起きにくいため、気がついたら重度になっていて手遅れになって抜歯になることもあります。
手遅れにならないためにも、ていねいなセルフケア・生活習慣の見直し・定期検診を心がけることが大切です。
「何かおかしいかも」と感じてから行動を起こすのではなく、定期的に歯科医院で診てもらうことによって大切な歯を守れます。
なお当院では、患者さまの不安に思っていることや、症状などをカウンセリングにてくわしくお聞きして、それぞれの状態に合わせた効果的な歯周病の治療プランをご提案いたします。
以下のページでは、重度歯周病を根本的に治療できるプログラムについても記載しているので、ぜひ参考にしてみてください。