インプラントのデメリットとは?年代別・手術回数別の欠点やメリットも解説
こんにちは!大阪 梅田のえみは総合歯科、理事長の加藤直之です。
虫歯や歯周病の悪化で抜歯せざるを得ないとき、選択肢として挙げられる治療法のひとつがインプラント(人工歯根)です。しかし「デメリットがありそうで不安」「自分は受けても大丈夫か、心配」という方も多いでしょう。
本記事ではインプラントのデメリットについて、年代別・手術回数別に紹介します。ブリッジや部分入れ歯との比較や、治療場所の違い・MRI検査の可否についてもあわせて解説。インプラントの欠点を理解しておきたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
なお、当院でのインプラント治療については、下記のページで詳しく紹介しています。どのような治療方法やアフターケアがあるか、気になる方はあわせてチェックしましょう。
目次
【共通】インプラント5つのデメリット
年代や手術回数を問わず、インプラントに共通するデメリットは主に次の5つです。
- 治療費用が高額になりやすい
- 外科手術が必要になる
- 治療やメンテナンスの期間が長い
- トラブルが起きる可能性がある
- 精通した歯科医が少ない
それぞれ詳しく見ていきましょう。
治療費用が高額になりやすい
インプラントの治療は基本的には保険適用外(自由診療)のため、料金が高額になりやすい傾向にあります。当院の場合、1本のインプラントにかかる金額はおおよそ以下のとおりです。
- 手術費用:約50万円(一次手術462,000円、二次手術55,000円)
- メンテナンス費用:5,000円/回~15,000円/回
上記には、次のような費用も含まれます。
- カウンセリング費用
- 検査費用(歯周病検査やCT、血液検査など)
- 薬剤にかかる費用(局所麻酔や痛み止めなど)
ただし、治療費用はデンタルローンや医療費控除などを利用することで、支払いの負担を軽減できます。インプラント治療における保険適用や医療費控除などについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もぜひ参考にしてみてください。
関連記事:インプラント治療に保険は適用できる?生命保険や医療費控除についても解説
外科手術が必要になる
インプラントに共通するデメリットのひとつが、外科手術が必要になる点です。局所麻酔や静脈内鎮静法で痛みは軽減されますが、体への負担は避けられません。
そのため、次のような状態だと「手術をやめたほうがいい」、あるいは「主治医や歯科医との相談が必須」になります。
- 全身の健康状態が悪い
- 口腔内に問題がある
- 特定の治療を受けている、または薬剤を服用している など
リスクのある状態や口腔環境などは、下表のとおりです。
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たとえば、糖尿病の方でHbA1c(※1)が7.0%以上の場合。感染症のリスクが高いうえ、傷がふさがりにくく、術後の回復が遅くなる可能性があります。
※1:直近1~2か月の平均血糖値を示す指標であり、おおよそ5.6%以上で精査が必要になる
また、ヘビースモーカーの場合は埋入しても骨と結合しにくく、治療期間の延長や脱落の可能性が少なくありません。免疫力の低下もあり、糖尿病と同様に感染症のリスクも高まります。
術後に後悔のないよう、不安がある方は主治医や歯科医とよく相談したうえで治療方法を選択しましょう。
治療やメンテナンスの期間が長い
インプラントのデメリットは、治療やメンテナンスの期間が長い点も挙げられます。通院回数は通常5回ほどですが、治療の完了は開始から3か月〜6か月ほど経過したあたりになります。
通院回数のわりに治療期間が長い理由は、埋入したインプラントと骨の結合に2か月ほどかかるためです。また、治療が完了したあとも定着状態や噛み合わせなどを確認するために、メンテナンスを受ける必要があります。
メンテナンスのスパンは、半年〜1年に1回程度。天然歯も含めて口腔全体の問題を早期発見したい場合は、3か月〜半年に1回程度のスパンで定期検査を受けることをおすすめします。治療期間について詳しく知りたい方は、こちらの記事もぜひ参考にしてみてください。
関連記事:インプラントの治療期間は?治療の流れや骨造成に伴う期間の平均も解説
トラブルが起こる可能性がある
インプラント自体が虫歯になることはありませんが、以下のようなトラブルが起こる可能性はあります。
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なお、当院では治療後の出血や腫れを最小限にするために、歯肉を切らないフラップレス手術も可能です。術前・術後のリスクについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてチェックしてみてください。
関連記事:インプラントのリスクとは?手術中・治療後に起きうる10個のリスクを解説
精通した歯科医が少ない
前述したトラブルは、手術経験が浅い歯科医で起こりやすい傾向にあります。令和2年の実態調査によると、歯科診療所67,874施設のうち、インプラント手術を実施しているのは24,027施設(35.4%)※2。
※2参考:厚生労働省|令和2(2020)年医療施設(静態・動態)調査(確定数)・病院報告の概況
インプラントに対応できる歯科診療所が増えるのは、患者にとって望ましいことではあります。しかし、治療には、下記のようにさまざまな専門知識が必要です。
- 口腔外科学
- 補てつ学
- 解剖学
- 組織学
- 病理学
- 材料学
- 生体力学 など
上記に精通した歯科医の手術でなければ、高額の費用をかけてもトラブルが頻出しかねません。後悔が残らないようにするためには、専門知識を十全に備え、患者に寄り添った説明と治療ができる歯科医を選ぶことが大切です。
なお、当院では口腔外科専門医歴20年以上のインプラント認定医が手術を担当します。不安や疑問にはしっかりお答えしますので、ぜひ気軽にご相談ください。
【共通】インプラント3つのメリット
年代や手術回数を問わず、インプラントに共通するメリットは主に次の3つです。
- 両隣の歯は削らない
- 自分の歯と同じように強く噛める
- 天然歯と同じような美しさを保てる
話す・食べるといった日常的な動作も、インプラントであれば治療前と同じように楽しめます。前述のデメリットと天秤をかけ、メリットのほうが大きいと感じる場合は、選択肢のひとつとして考えていることを歯科医へ相談してみましょう。
【年代別】インプラントのメリット・デメリット
ここではインプラントのメリット・デメリットを、年代別に分けて紹介します。
- 20代などの若年層
- 40代などの中年層
- 80歳などの高年層
なお、インプラント治療を受けたことがある方の平均年齢や、年代別の患者数について知りたい方は、こちらの記事もあわせてチェックしてみてください。
関連記事:インプラントの平均年齢は?年齢層ごとの割合や高齢者の治療リスクも解説
20代などの若年層におけるメリット・デメリット
20代をはじめとした若年層は体力回復力が高く、インプラント手術後の経過がよい点がメリットです。一方で、治療費用が高額なため、資金力が低いと支払いの負担が大きい点がデメリット。ただし、前述のように支払いの負担軽減策はあります。
なお、インプラント治療は基本的に、成長期を過ぎた18歳以上から受けられます。顎の骨が成長している途中で治療を受けると歯並びにズレが生じ、噛み合わせ不良などのトラブルが発生しかねません。
インプラント治療を早めに受けたい場合でも、身体面や資金面を踏まえると、18歳以上かつ就職後が望ましいでしょう。
40代などの中年層におけるメリット・デメリット
40代をはじめとした中年層は歯周病や虫歯の発生がピークになり、かつ持病がある方が増える年代です。
中年層でインプラントを利用するメリットは、老後の認知症や誤嚥性肺炎(※3)のリスクを低減できる点にあります。
※3:気管に誤って入った食物や唾液などを介して、細菌が肺に達し炎症を起こす
しっかり噛めることで唾液の分泌が促されるうえ、脳への血流量が増えるためです。咀しゃくが脳を活性化させるのは、下図のように口周りをコントロールする脳神経の割合が多いためでもあります。
一方、持病の有無や程度によっては治療のリスクが高まる欠点もあります。持病がある場合は自己判断せず、治療の可否について主治医とよく相談しましょう。
80歳などの高年層におけるメリット・デメリット
80歳をはじめとした高年層は、残存歯が少なくなる年代です。インプラント治療のメリットは中年層と同様に、認知症や誤嚥性肺炎の予防につながる点にあります。
加えて、自分の歯で当たり前のように食事ができることで、QOL(生活の質)を維持・向上できる点も魅力的です。
一方、認知症になって歯磨きなどがきちんと行えない場合は、欠点が目立つケースも。たとえば、天然歯がなくなりインプラントだけが残ると、対面の歯茎を傷つける可能性があります。中には、血みどろになる悲惨なケースも少なくありません。
そのため、高年層でインプラント手術する場合は、オーバーデンチャーで対応するケースもあります。インプラントの種類について詳しく知りたい方は、こちらの記事もぜひ参考にしてみてください。
関連記事:インプラントの種類を徹底比較!メーカー・パーツごとの値段や特徴も解説
【手術回数別】インプラントのメリット・デメリット
今度は、インプラントのメリット・デメリットを手術回数別に見ていきましょう。
- 1回法(ワンピース型)
- 2回法(ツーピース型)
それぞれ詳しく解説します。
1回法(ワンピース型)のメリット・デメリット
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1回法とは部品が一体化したワンピース型のインプラントを、1回の外科手術で埋入する方法です。1回法は歯肉の切開が1回で済む反面、義歯(上部構造)をはめるまでの間、土台(アバットメント)の一部が向き出しの状態になります。
その分、感染リスクが高く、周囲炎や破損が進行すると撤去や再埋入が必要です。また、ワンピース型は部品が一体化しているために、トラブルが起こったときの交換は容易ではありません。
たとえば、前述した高年層のように、対面側の歯茎を傷つける恐れがある場合。歯茎を守るためには、多量の冷却水を注入しながら上部をカットする必要があります。
手軽さが売りの1回法ですが、上記のようなデメリットがあるため当院では実施していません。将来的に安全な状態で使い続けたい場合は次項の2回法がおすすめです。
2回法(ツーピース型)のメリット・デメリット
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2回法とは一次手術で本体を埋入し、二次手術で土台の連結と義歯をセットする方法です。
ワンピース型と異なり、対面する歯がなくなってもアバットメントを外すことで簡単に歯茎の損傷を防げます。その分費用が高く時間もかかりますが、長い目で見るとメリットが大きい手術法といえるでしょう。
インプラントとブリッジ・部分入れ歯の違い
抜歯した部分の治療法は、インプラントのほかにもブリッジと部分入れ歯の2つがあります。
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上記を踏まえると、各治療法がおすすめなのは次のような方になります。
- 治療前と同じような感覚で過ごしたい:インプラント
- できる限り治療費用を抑えたい:部分入れ歯
- 治療内容と費用、双方にある程度の満足感を得たい:ブリッジ
なお、インプラントとブリッジの違いについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。それぞれの平均寿命や治療費用について詳しく知りたい方は、あわせてチェックしてみてください。
関連記事:インプラントかブリッジか?費用・寿命などの違いやメリット・デメリットを徹底比較
インプラントのデメリットに関するQ&A
最後に、インプラントのデメリットに関するよくある質問と回答を紹介します。
- 奥歯と前歯で違いはありますか
- 手術中の痛みはありますか
- MRI検査は受けても大丈夫ですか
それぞれ詳しく見ていきましょう。
奥歯と前歯で違いはありますか
結論から言うと、奥歯と前歯とでは手術の成功率・費用ともにそれほど大きな違いはありません。
たしかに、前歯は顎の骨が薄く、審美性がより求められるなどの理由から難易度は上がりやすい傾向にあります。しかし、手術が不可能な場所はなく、欠点も基本的には同じです。
奥歯や前歯のインプラント治療について詳しく知りたい方は、下記の記事もぜひ参考にしてみてください。
関連記事:奥歯のインプラントにかかる費用やメリット・デメリットを徹底解説!
関連記事:前歯のインプラントは10年後も大丈夫?費用や後悔しない歯科医の選び方も解説
手術中の痛みはありますか
インプラント治療では、強い痛みを感じることはほとんどありません。外科手術の際は静脈内鎮静法や局所麻酔を利用し、術後は痛み止めを処方するためです。
当院では、インプラントを3本以上埋入する場合、静脈内鎮静法をおすすめしています。麻酔専門医が担当し、ほとんど眠りに近いリラックスした状態で手術は終了。術後も大きな痛みはなく、笑顔で帰る方が多いため、安心してお任せください。
MRI検査は受けても大丈夫ですか
治療後も、MRI検査は受けても問題ありません。現在主流のインプラントは、非磁気性金属であるチタンやチタン合金でできているためです。
ただし、オーバーデンチャーや医療用インプラントは、磁気性金属が含まれている可能性があります。予想外のトラブルが発生しないよう、検査前に主治医へ確認しておくと安心でしょう。
まとめ|インプラントのデメリットをきちんと理解しよう
インプラントにはメリットだけでなく、費用やリスクなどのデメリットもあります。しかし、寿命や使い心地など、ブリッジや部分入れ歯よりも優れている部分が多いのも事実です。欠点もきちんと把握したうえで、希望に合った治療方法を選択していきましょう。
なお、当院のインプラント治療について興味がある方は、以下のページをぜひご覧ください。相談や診療のご予約を、スタッフ一同心よりお待ちしております。