歯周病のレーザー治療とは?進行度別の費用やメリット・デメリットも解説
こんにちは!大阪 梅田のえみは総合歯科、理事長の加藤直之です。
歯周病のレーザー治療は、歯周病菌の死滅・無毒化が可能になるだけでなく、治癒を早めたり、殺菌効果があったりと効率的に治療が行えます。レーザーにはいくつか種類があり、保険適用になるものもあるので、気軽に治療を受けられるのも大きな魅力です。
そこで本記事では、歯周病のレーザー治療について解説します。レーザー治療にかかる費用やメリット・デメリットも掲載しているので、歯周病のレーザー治療を受けようか検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
また、当院でのレーザー治療は、下記のページで詳しく紹介しています。治療の流れや費用が気になる方は、合わせてチェックしましょう。
目次
歯周病のレーザー治療とは
深くなった歯周ポケットには歯垢や歯石が溜まり、放置していると歯周病が発症・進行します。歯周病治療におけるレーザー治療では、歯周ポケットにレーザーを照射することによって、以下のような効果を発揮します。
- 歯周ポケットに潜む歯周病菌を殺菌し、消毒する
- 歯茎内側の不良肉芽を蒸散する
- 歯茎に溜まった膿の排出を促進する
また、歯科用のレーザーは安全性が確認されているため、副作用の心配もありません。食事や仕事の制限もなく、治療後すぐに普段の生活に戻れます。
レーザー治療は万能な治療法というわけではなく、一般的な歯周病治療はその他の治療法と併せて行われます。そのため、レーザーを使う適切なタイミングや種類を熟知した、高い実績とノウハウを有した歯科医院を選んで、治療を受けましょう。
重度の歯周病「歯槽膿漏」に対するレーザー治療以外の治療法が知りたい方は、以下の記事もチェックしてみてください。
関連記事:歯槽膿漏の7つの治し方とは?自宅でできる予防法や治療薬の効果も解説
【進行度別】歯周病のレーザー治療にかかる費用
歯周病のレーザー治療にかかる費用は、以下のような進行度合いによって異なります。状態が酷い程、照射する歯周ポケットの範囲が広くなるので、その分費用も高くなります。
- 軽度歯周病
- 中等度歯周病
- 重度歯周病
それぞれ詳しく見ていきましょう。
軽度歯周病
軽度の歯周病とは、歯茎と歯の間に3〜4ミリの隙間ができている状態を指します。軽度の歯周病にかかる費用の相場は、2回の通院で3〜7万円程度です。軽度の歯周病になると、以下のような症状が起こります。
- 歯茎が赤く腫れる
- 簡単に出血しやすい
- 歯を支える骨が破壊され始める
- 歯茎が下がり始める
歯がぐらつくほどではありませんが、歯を支える骨が溶け始めている段階です。レーザー治療と併せて、スケーリングやルートプレーニングといった治療法で歯垢や歯石を綺麗にする場合があります。
中等度歯周病
中等度の歯周病とは、歯茎と歯の間に5〜7ミリの隙間ができている状態を指します。中等度の歯周病にかかる費用の相場は、4回の通院で14〜16万円程度です。中等度まで炎症が進むと、以下のような症状が起こります。
- 歯を支える骨が半分近くまで破壊される
- 口臭が悪化する
- 歯がぐらつき始める
中等度以上まで症状が進行している場合は、歯周ポケットの内部に付着した歯石の除去が必要です。無理にスケーリングで歯石を除去しようとすると、歯肉退縮を引き起こす恐れがあります。レーザーを照射することで複雑な形の歯周ポケットにも対応できるようになります。
重度歯周病
重度の歯周病とは、歯茎と歯の間に6ミリ以上の隙間ができている状態を指し、歯槽膿漏とも呼ばれます。重度の歯周病にかかる費用の相場は、6回の通院で22〜33万円程度です。重度まで進行すると、以下のような症状が起き、日常に支障をきたします。
- 歯を支える骨が半分以上破壊される
- 歯茎の中に膿が溜まる
- 歯茎が大きく腫れる
- 歯がぐらぐらになる
歯周ポケットが深くなり、溜まっている歯垢や歯石を完全に除去するのが難しいです。そのため、場合によっては歯肉を切開する外科処置が必要になります。外科処置の代わりとして、レーザー治療が用いられる場合もあります。
歯周病のレーザー治療の保険適用条件
Er:YAGレーザーというレーザーを使うことで、保険適用内での治療が可能です。レーザー治療が保険適用になる条件は、虫歯治療又は歯周病の歯石除去に限ります。元々は虫歯治療のみが保険適用内でしたが、2010年に歯周病治療、2018年に歯茎への処置も保険適用が認められました。
当院のレーザー治療も、保険適用内での治療が可能です。歯科用レーザーは普及し始めた頃から治療に導入しているため、高い実績とノウハウを持ち合わせております。処置の補助的に使う場合は、無償でレーザー治療を行っておりますので、ご安心ください。
歯周病にレーザー治療を用いる5つのメリット
重度の歯周病で外科処置に恐怖があるという方も、レーザー治療では口内への負担が少ないので、安心して治療に臨めます。歯周病にレーザー治療を用いる主なメリットは、以下のとおりです。
- 殺菌効果がある
- 傷の治りが早い
- 出血・痛みが少ない
- 菌血症が発生しづらい
- 新生骨形成を促進する
それぞれ詳しく解説します。
殺菌効果がある
レーザーでは高い熱エネルギーを患部に照射することで、殺菌します。また、歯の根に沈着している毒素も無毒化できるのが特徴です。抗菌薬のように耐性菌が発生する心配もありません。
レーザーの光と熱は、歯周ポケットの奥深くや複雑な形をした歯周ポケットの内部まで到達するので、広範囲に対して殺菌効果が期待できます。
傷の治りが早い
レーザー治療には、傷が早く治癒する効果もあります。レーザー治療によって傷の治りが早まる理由は、以下のとおりです。
- 出血している患部に対して止血を行う
- 熱消毒を加える
- 細胞や組織を破壊しない
また、歯槽膿漏まで進行している場合においても、レーザーによって歯肉を切開し、膿を出すため、傷だけでなく炎症の治りも早いです。
出血・痛みが少ない
外科手術のように歯茎をメスで切開しないため、出血が少ないです。また、患部を熱で焼いて止血するため、さらに出血を抑えられます。出血は少なかったとしても、レーザーで照射すると聞くと、痛みを心配される方も多いのではないでしょうか。
レーザー治療では、ほとんど痛みがありません。レーザーの出力は自由にコントロールできるので、部分的に熱が集中して痛みが発生しないよう制御できるのです。
菌血症が発生しづらい
血液の中に菌が侵入し、全身に菌が回ることを指す菌血症。菌血症が起こると、細菌性心内膜炎や脳への感染が発症する危険があります。出血を伴う治療には菌血症のリスクがありますが、レーザー治療は菌血症が発生しづらいと言われています。
レーザー治療によって菌血症が抑制される理由は、以下のとおりです(※1)。
- 細菌に対して殺菌効果があるため
- 歯周組織への損傷が少ないため
※1参考:Er:YAGレーザーの歯周治療への応用と菌血症予防の可能性
新生骨形成を促進する
歯周病が悪化すると、歯を支えている骨が溶けていきます。レーザー治療には、新生骨の形成を促進する効果があるので、歯周病によって失われた骨の再生が期待できます。
Er:YAGレーザーの照射によって、骨細胞から分泌されるスクレロスチンが減少することが確認されました。スクレロスチンは、骨形成を抑制する因子であるため、スクレロスチンが減少することによって、新生骨形成や骨量・骨強度の増加に有利に働くのです。
歯周病にレーザー治療を用いる3つのデメリット
メリットが多くあるレーザー治療ですが、保険適用されるレーザーの種類や使用範囲に制限があったり、症例によっては適用できない場合があったりと、万能ではありません。歯周病のレーザー治療における主なデメリットは、以下のとおりです。
- 治療時間が長くなる
- 自由診療になる場合がある
- 歯ぐきの切開が必要になる場合がある
それぞれ詳しく見ていきましょう。
治療時間が長くなる
光線を照射することによって、切開したり、粘膜を蒸散させたりするため、従来のメスやドリルを使った外科処置に比べると、治療時間が長くなる恐れがあります。
また、レーザーの光が患部以外に照射しないよう、細心の注意を払う必要があることも、治療時間が長くなる要因の一つと言えるでしょう。
歯ぐきの切開が必要になる場合がある
重度の歯周病にまで進行している場合は、レーザーの照射だけでは治療が不十分である場合があります。レーザーで届く範囲や殺菌効果にも限界があるからです。歯周ポケットの溝が深くなると、溝の中に入り込んだ歯垢や歯石を外側から除去するのが難しくなります。
上記のようなケースでは、歯茎を切開する必要があります。歯茎を切開することで、歯周ポケットの奥深くに入り込んだ歯垢や歯石を内側から除去するのです。
治療効果が高い歯科用レーザーの3つの種類
歯周病菌を殺菌し、患者様の負担を少なくする歯科用レーザーには、主に以下のような種類があります。レーザーの光線は歯根にまで到達し、歯根の表面や歯の神経を損傷する恐れがあるので、どの歯科用レーザーでも歯周病治療に適しているわけではありません。
- Er:YAGレーザー
- 炭酸ガスレーザー
- ペリオウェイブ
それぞれの特徴について、見ていきましょう。
Er:YAGレーザー
歯周病治療で使用されている歯科用レーザーの中でも、最も人に優しいレーザーと言われているのが「Er:YAG(エルビウムヤグ)レーザー」です。不快な音や振動が少なく、麻酔も不要なケースが多いので、患者様の負担を最小限にできます。
Er:YAGレーザーの特徴は、以下のとおりです。
- 照射した組織の表面にのみ作用し、痛みが抑えられる
- 照射した組織や周囲への熱作用が少ない
- 傷の治癒を促す効果がある
- 骨や歯石といった硬組織にも使える
炭酸ガスレーザー
歯周組織と皮膚組織にだけ反応し、歯周ポケットの深くまでは到達しないため、安全に使用できるレーザーが「炭酸ガスレーザー」です。炭酸ガスレーザーには、HLLT作用とLLLT作用の2つの効果があります。
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炭酸ガスレーザーは、当院でも使用しているレーザーです。
ペリオウェイブ
光線力学療法を用いて、歯周病の原因となる菌を破壊するレーザーが「ペリオウェイブ」です。ペリオウェイブでは、歯一本を治療するのに、約60秒という短時間で終了します。また、抗生物質を用いない治療法なので、体内に抗体ができることもありません。
ペリオウェイブで用いられる光線力学療法は、癌治療や眼科治療などでも保険適用として採用されている方法なので、安全性は保証されています。
歯周病のレーザー治療に関するよくある質問
最後に、歯周病のレーザー治療について、よくある質問を紹介します。
- 歯周病のレーザー治療のリスクは?
- 重度の歯周病もレーザー治療で治る?
- 歯周病のレーザー治療は痛い?
それぞれ詳しく見ていきましょう。
歯周病のレーザー治療のリスクは?
歯周ポケットにレーザーを照射することで、歯周病の原因菌を殺菌し、歯茎の腫れや出血を抑えられるレーザー治療。メリットが多い半面、以下のようなリスクも存在します。
- 重度の歯周病の場合は、レーザーだけでは殺菌が不十分になるケースがある
- 人によっては痛みを感じる場合がある
- 従来の歯周病治療よりも治療時間が長引く場合がある
重度まで歯周病が進行している場合、歯周ポケットの深さや複雑な形からレーザーの光線が、内部まで到達しない可能性があります。また、痛みは個人差があるので、人によっては麻酔を使用する場合もあるでしょう。メスを使った処置と比較すると、治療時間は長引く可能性もあります。
まずは、歯科医院で検査を受け、レーザー治療が適しているかを相談しましょう。
重度の歯周病もレーザー治療で治る?
レーザーを使用すれば歯周病は完治するというわけではなく、他の治療法と併せて補助的に使用する場合も多いです。特に、重度の歯周病ではレーザーだけでは殺菌効果が薄い可能性もあります。仮に歯垢や歯石を綺麗に除去できたとしても、自宅のケアを怠れば、再発するリスクもあるでしょう。
当院では、重度の歯周病を根本的に治療できる「THP(トータルヘルスプログラム)治療」を行っております。歯周病菌の特定を遺伝子レベルで行い、口内の細菌をバランスの良い状態までもっていきます。さらに、最新機器のレーザー治療も導入し、治療効果を引き上げます。
歯周病のレーザー治療は痛い?
レーザー治療の痛みはほとんどありません。ただし、痛みには個人差があるので、人によっては若干の痛みを感じ、麻酔を必要とする場合もあります。レーザーの熱で歯周組織を傷つけるわけではないので、ご安心ください。
まとめ|歯周病のレーザー治療は治療効果が高い
歯周病のレーザー治療は、口内にほとんど負担をかけずに歯垢や歯石の除去が可能です。殺菌効果があったり、腫れや出血が抑えられたり、傷の治癒が早かったりと患者様の安全面を配慮した治療法と言えるでしょう。
また、レーザーの種類によっては保険適用内で受けられるので、患者様の家計にも負担をかけません。ただし、歯周病の進行度合いによってはレーザーだけでは殺菌が不十分な場合もありますので、適切な治療法は歯科医院でご相談ください。
当院では、4種類のレーザー機器を使い分けて、治療を行っております。レーザー治療にあたる前に、患者様の不安が解消されるよう、歯科医師・歯科衛生士からしっかりとご説明をさせていただきますので、ご安心ください。当院のレーザー治療について気になる方は、下記のページをご覧ください。