歯周病の治し方は?自宅での歯磨きでは治せない理由と3つの予防方法
こんにちは!大阪 梅田のえみは総合歯科、理事長の加藤直之です。
歯周病の症状に気づいたものの、できれば歯科医院を受診せずに自宅で治したいと思う方もいるでしょう。
軽度の歯肉炎であれば、自宅でのセルフケアでもある程度の改善が見込めますが、歯周病は歯科医院での治療が必要です。
症状がないからと放置すると歯が抜けてしまうこともあるため、早期発見・早期治療できるように歯科医院を受診しましょう。
本記事では、歯周病の治し方と自宅でできる予防法について解説します。歯周病で悩んでいる方の参考になれば幸いです。
当院では、受診の際にカウンセリングを行い、口腔内のお悩みや治療に関するご希望などをお聞きします。治療の流れに関しては以下のページをチェックしてください。
目次
歯周病の治し方は?自宅でのセルフケアでは治療できない理由
歯周病は、歯を支える歯茎や顎の骨などの歯周組織が破壊される病気です。また、歯周病菌は歯垢や歯石を好んで増殖し、炎症を引き起こします。
歯垢は自宅での歯磨きで取り除けますが、歯石は歯科医院でスケーラーという器具を用いて歯科医師や歯科衛生士によって取り除かなくてはなりません。
市販でスケーラーを販売している場合もありますが、器具の先端は鋭く歯茎を傷つけてしまうため、専門家でなければ安全に歯石を取り除くのは難しいと言えます。
したがって、歯周病の治療は歯科医院で行うのが一般的です。
歯科医院での治療だけでなく、自宅でできるセルフケアも加わることで歯周病の予防や進行を抑える効果があるため、丁寧な歯磨きを心がけましょう。
歯周病の原因について詳しく知りたい方は、こちらの記事もチェックしてください。
関連記事:歯周病の原因は?悪化させる5つのリスクファクターと進行度別の治療方法
歯周病は自分で治せる?市販アイテムや薬の効果
市販アイテムとして販売されている商品は、以下のとおりです。
- 歯磨き粉
- 洗口液・マウスウォッシュ
- 軟膏
- 内服薬
市販アイテムの効果を正しく理解できるよう、参考にしてください。
歯磨き粉
「歯周病に効く」と記載されている歯磨き粉は歯周病の予防に効果的ですが、完全に治す効果はありません。
歯磨き粉によっては薬用成分を配合した商品もあるため、炎症を抑える効果は期待できます。
歯磨き粉の薬用成分の効果で腫れが少し落ち着き改善したように感じますが、根本的な原因となる歯石は取り除けません。
したがって、付着してしまった歯石は歯科医院で取り除く必要があります。また、歯石になる前に、柔らかい歯垢を歯磨きで落とせるようにブラッシング方法を見直すのも重要です。
歯周病の予防のためには、口腔内の状態に合った歯磨き粉の使用に加え、定期的な歯科検診・クリーニングも併せて行うことが大切です。
洗口液・マウスウォッシュ
洗口液やマウスウォッシュも歯磨き粉と同様に、歯周病の予防に効果的ですが治す効果はありません。
洗口液やマウスウォッシュに含まれる成分には殺菌効果が期待できます。しかし、うがいだけでは歯石だけでなく歯垢も除去できません。
歯磨きが十分に行えると、洗口液やマウスウォッシュの効果が発揮されることを理解しておきましょう。
洗口液やマウスウォッシュの使用は歯周病の根本的な治療にはなりませんが、薬用成分の配合された商品を歯磨きと併用することで予防に効果を発揮します。
軟膏
ドラッグストアなどで歯周病の治療薬として販売されている軟膏は、歯周病の症状を緩和しますが、根本的に治す効果はありません。
市販薬は歯磨き粉や洗口液よりも薬としての効果は少し高く、消炎作用や殺菌作用により一時的に炎症を抑えられます。
軟膏はその場しのぎの対症療法であるため、薬を塗って症状が落ち着いたからと放置すると歯周病はさらに進行してしまいます。あくまでも補助的なアイテムであることを忘れずに、正しく使用するようにしましょう。
症状が落ち着いても、放置せずに歯科医院を受診するのをおすすめします。
内服薬
内服薬として歯科医院で処方される抗生物質は、殺菌作用により効果を発揮しますが根本的な治療にはなりません。
近年、歯周病の治療に内服薬として抗生物質を導入する歯科医院が増えています。
歯科医院で処方される抗生物質には高い効果がありますが、内服薬のみでは根本的な原因である歯垢や歯石は除去できません。
ポケット内に塗布する抗菌薬も良く使用されますが、抗菌作用は期待できても完治させられないのが現状です。
炎症が強い場合に内服薬で炎症を抑え、落ち着いたら歯石除去などの歯周病治療を行うなど、併用することで高い効果を得られるでしょう。
歯周病は自力での治し方はないが歯磨きでできる3つの予防方法
自宅でできるセルフケアは、以下3つが挙げられます。
- 歯周ポケットを意識した歯磨き
- 補助用具の使用
- 薬用効果のあるアイテムの使用
歯周病の予防には日々の歯磨きが重要であり、歯周病を意識した正しいブラッシング方法を身につける必要があります。
詳しく解説するので、この機会にブラッシング方法を見直しましょう。
当院では、患者さんに合ったブラッシング方法をお伝えしています。正しいブラッシング方法か不安な方は、お気軽にご相談ください。
歯周ポケットを意識した歯磨き
歯周病の原因となる歯垢や歯石は、歯と歯茎の境目にある歯周ポケットに溜まりやすいため、意識して歯磨きを行うのが大切です。
具体的には、歯と歯茎の境目に歯ブラシの毛先を45度に傾けて当て、小刻みに動かすように磨きましょう。磨く際はブラッシング圧が強くならないように、優しく丁寧に磨くのがポイントです。
また、使用している歯ブラシは1ヶ月を目安に交換するのがおすすめです。古くなった歯ブラシはコシが弱くなり、清掃効果が減少してしまいます。
歯周ポケットの深さは、健康な歯で1〜2mm程度です。歯周病が進行すると歯周ポケットが深くなり、歯磨きでは歯垢を取り除ききれなくなるため、定期的に歯科医院でクリーニングを受ける必要があります。
補助用具の使用
歯周病の予防には歯磨きが重要ですが、歯ブラシだけでは歯と歯茎の間の歯垢や歯石を取りきれません。
そのため、歯の間や磨きにくい場所には以下の補助用具を活用しましょう。
- デンタルフロス
- 歯間ブラシ
- ワンタフトブラシ
歯ブラシだけでは落とせない歯と歯の間の歯垢には、デンダルフロスや歯間ブラシが効果的です。
糸状のフロスは、歯と歯の間に通して側面についた歯垢を落とします。一方、歯間ブラシは届きにくい歯と歯の間にある歯垢を取り除くのに効果的です。
ワンタフトブラシはヘッドが小さく毛束の少ない小型の歯ブラシで、親知らずなどの磨きにくい部分の歯垢を落とすのにおすすめです。
補助用具はむやみに使うと効率が悪く歯や歯茎を傷つけることがあるため、使い慣れない方は歯科医院でブラッシング指導を受けましょう。
薬用効果のあるアイテムの使用
歯周病の予防には歯磨きや補助用具の使用に加えて、以下の薬用効果のあるアイテムを使用するのも効果的です。
- 歯磨き粉
- 洗口液
- マウスウォッシュ
市販されている歯磨きや洗口液・マウスウォッシュは、歯周病を治す効果はないものの予防には効果を発揮します。
ただし、原則として正しいブラッシング方法で歯垢が落とせないと、効果は十分に発揮できません。
また、商品によって配合されている薬用成分は異なるため、自分の目的に合ったアイテムを選ぶ必要があります。
とはいえ、ドラッグストアなどではたくさんの商品が陳列しており、どの商品を選ぶか悩む方もいるでしょう。選ぶアイテムに悩むようでしたら、歯科医院で相談することをおすすめします。
歯周病を治す方法は?一般的な治療方法を進行度別に紹介
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治療に入る前にはポケットの深さや炎症の度合い・歯石の有無などを検査し、歯周病の進行度をチェックします。
歯周病の治療方法に関して詳しく知りたい方は、こちらの記事も併せてご覧ください。
関連記事:歯槽膿漏の7つの治し方とは?自宅でできる予防法や治療薬の効果も解説
軽度の歯周炎
軽度の歯周炎は、歯周ポケットの深さが2〜4mm程度で歯茎が炎症を起こしている状態です。
治療として、ブラッシング指導やスケーリング(歯石除去)を行います。
いずれの進行度でも、歯周病治療の基本はブラッシング指導です。
歯科医院では、歯科衛生士が患者さんの歯磨きを確認し、正しい歯磨き方法を指導します。口腔内の状態に合った歯ブラシの選び方や磨き方などのアドバイスを受けられるため、歯磨き方法に自信がない方におすすめです。
スケーリング後には再度検査し、改善が見られれば定期的なメンテナンスへ移行します。
軽度の歯周炎では歯茎の腫れや歯磨き時の出血が症状として挙げられますが、気づかないことが多いのも事実です。
早期発見・早期治療が大切であるため、歯周病の症状が気になる方は早めに歯科医院を受診しましょう。
歯周病の症状について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
関連記事:歯茎が腫れる原因は?自分でできる応急処置と治し方を徹底解説
中等度の歯周病
中等度の歯周炎は軽度から進行し、歯周ポケットの深さが4〜6mm程度の状態です。
治療としてブラッシング指導やスケーリング後に再検査し、ポケットが深い部分には歯根部分の歯垢や歯石除去(SRP)を行います。
SRP(スケーリング・ルートプレーニング)は専用の器具を使い、歯周ポケット内の歯垢や歯石を取り除く処置です。
SRP後は再度検査を行い、改善されればメインテナンスに移行します。
中等度の歯周病では歯を支える顎の骨が歯根の長さの2分の1程度まで溶かされ、歯根が露出している場合もあります。
そのため、歯茎の腫れや出血だけでなく、痛みを伴ったり排膿や知覚過敏などの症状が見られるでしょう。
中等度の歯周炎は、軽度の歯周炎よりも進行しているため、早期発見・早期治療がより重要です。
中等度歯周病の症状である排膿について詳しく知りたい方は、こちらの記事もチェックしてください。
関連記事:歯茎から膿が出る原因は何?5つの原因と治療法を徹底解説
重度の歯周病
重度の歯周炎は歯周ポケットの深さが6mm以上で、歯根の露出や歯槽骨の吸収が著しい状態です。
治療は初期・中等度の流れで行った後、必要に応じて歯周外科処置や歯周組織再生療法を行います。
歯周外科処置は歯茎を切開して歯根を露出させた状態で、歯垢や歯石を除去する治療法です。
一方、歯周組織再生療法は歯周病によって失われた骨を再生させる治療法で、主に自費診療として行われています。
重度歯周病は中等度の症状に加えて、噛みにくい・噛むと痛いなど日常生活に支障が出るようになり、状態によっては抜歯が必要になることがあります。
重度の歯周炎は軽度や中等度よりも進行している分、治療が複雑です。放置していると自然に抜け落ちてしまうこともあるため、歯周病の症状が気になる方は早めに歯科医院を受診しましょう。
歯周病における自宅での治し方に関するよくある質問
- 歯周病の手遅れな症状はどのような状態か
- 歯周病はうがいで治るのか
- 歯周病予防におすすめな歯磨き粉はあるのか
自宅でのケア方法について知りたい方は、ぜひチェックしてください。
歯周病の手遅れな症状はどのような状態ですか?
歯周病が進行し、手遅れな症状は以下のとおりです。
- 動揺が強く食事の際に痛む
- 歯茎が赤く腫れる
- 出血や排膿を伴う
歯周病が進み手遅れになると、歯を支える歯槽骨の吸収が大きく動揺も強くなります。そのため、食事の際に痛みを感じることもあります。
また、歯茎からの出血や排膿も見られ、口臭も強くなるでしょう。
進行度によっては、歯が抜けそうなほど動揺したり、自然に抜け落ちてしまうことがあるのも事実です。
手遅れな状態になると歯を残すことは難しく、治療として抜歯するしか方法がありません。抜歯したあとはブリッジや入れ歯、インプラントなどを入れて噛み合わせを戻す必要があります。
歯周病はうがいで治るのは本当ですか?
「歯周病に効く」と記載されている洗口液を使っても、うがいでは治せません。
歯周病の原因は、歯の周りについた歯垢や歯石です。
洗口液には殺菌作用がありますが、歯周ポケット内の歯垢や歯石は除去できません。したがって、歯周病を治すには根本的な原因である歯垢や歯石を取り除く必要があります。
とはいえ、洗口液に配合されている殺菌効果などの薬用成分で歯周病を予防できるため、あくまでも補助的な役割であると理解しておきましょう。
歯周病予防におすすめな歯磨き粉はありますか?
歯周病予防に効果的な歯磨き粉の薬用成分を以下にまとめました。
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殺菌成分として代表的なIMPMは膜状の細菌が集まったバイオフィルムにも作用し、殺菌できます。
歯茎の腫れや出血が気になる方には、抗炎症成分であるトラネキサム酸やグリチルレチン酸がおすすめです。また、口臭が気になり始めた方には、口臭予防成分であるCPCやLSSが配合された歯磨き粉を選ぶと良いでしょう。
歯磨き粉はたくさんの種類が販売されており、配合されている薬用成分は異なります。口腔内の状態に合った歯磨き粉を選んでください。
どの歯磨き粉が合っているか分からない方は、歯科医院で相談しましょう。
まとめ|歯周病は自宅では治せないが予防できる
歯周病を治すには進行度合いに併せた治療が必要であり、歯科医院を受診する必要があります。
しかし、自宅でのセルフケアは歯周病の予防に効果的です。歯磨き粉や洗口液などを上手に併用して、効率よく予防しましょう。
当院では、カウンセリング後に口腔内の検査を行い、患者さんに合わせた治療計画を立てていきます。不安や悩みなどありましたら、お気軽にご相談ください。