歯周病の口臭はどんなにおい?臭い以外の症状や5つの治し方も解説

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こんにちは!大阪 梅田のえみは総合歯科、理事長の加藤直之です。

歯周病を患っている場合、悪臭とも言える「におい」を発している可能性があります。食品が腐ったにおいや、生臭いにおいがするので、周りにいる人に嫌煙される恐れもあるでしょう。まずは、口臭の原因を突き止め、適切な対処を試みる必要があります。

そこで本記事では、歯周病によるにおいや口臭の原因について解説します。歯周病などの口腔トラブルによるにおいを治療する方法も掲載しているので、自身の口臭を改善したい方は、ぜひ参考にしてみてください。

また、当院での口臭治療は、下記のページで詳しく紹介しています。治療の流れや費用が気になる方は、合わせてチェックしましょう。

口臭を招く歯周病とは

歯周病は、プラークの中に潜む歯周病原細菌によって発症する感染症の一種です。歯茎に炎症が起きたり、歯を支える骨(歯槽骨)が溶けたりします。2018年に8020推進財団が行った調査によると、日本人が歯を失う原因の第一位は歯周病という結果になりました(※1)。

※1参考:第2回 永久歯の抜歯原因調査

歯周病は唾液によって人から人へと感染し、口内環境が悪いと歯周病原菌が増殖します。歯周病を患っている方の割合は年齢と共に増加し、歯周ポケットが4mm以上(中等度歯周炎)の方の割合は、55~59歳では全体の約半数にも上ります(※2)。

※2参考:令和4年 歯科疾患実態調査結果の概要

初期の段階では自覚症状がほとんどないため、「におい」などのお口のトラブルが出てきた頃には、歯周病が進行している可能性があるのです。

歯周病の臭いの原因は細菌が生成するガス

歯周病の進行に伴い、口臭も強くなります。歯周病によって強い臭気を放つようになる原因は、歯周病原菌の働きによって生成されるガスです。揮発性硫黄化合物(VSC)とも呼ばれるガスは、口臭原因物質の約90%を占めるとも言われています。

揮発性硫黄化合物(VSC)は、以下のような流れで生成されます。

  1. 新陳代謝で剥がれた粘膜細胞や血球成分、食べ物の残りカスなどのタンパク質を歯周病原菌が分解する
  2. システインやメチオニンなどの含硫アミノ酸が生成される
  3. 含硫アミノ酸が揮発性硫黄化合物(VSC)に変化する

歯周病の口臭はどんなにおい?

他人の口臭は気付きやすいですが、自分の口臭となるとなかなか気付けないものです。揮発性硫黄化合物(VSC)が発するにおいは、以下のように例えられます。

  • 腐った卵のにおい
  • 生臭い魚のにおい
  • 生ごみのにおい

それぞれ詳しく見ていきましょう。

腐った卵のにおい

揮発性硫黄化合物(VSC)の一種である「硫化水素」は、卵が腐ったようなにおいを発します。硫化水素は、舌苔からの産生量が多いので、舌の表面が白や黄色に見える人は、歯周病を患っていなくても口臭を発している可能性があります。健康な状態でも発生する臭いなので、他人から臭った経験がある方も多いでしょう。

生臭い魚のにおい

揮発性硫黄化合物(VSC)の一種である「メチルメルカプタン」は、魚の生臭いにおいや、玉ねぎの腐ったにおいに例えられます。硫化水素よりも臭気が強く、歯周病の進行に伴って濃度が高くなります。通常は、硫化水素の割合の方が高いですが、歯周病を患うとメチルメルカプタンの割合の方が高くなるのが特徴です。

生ごみのにおい

同様に揮発性硫黄化合物(VSC)の一種である「ジメチルサルファイド」は、生ごみのようなにおいを発します。硫化水素やメチルメルカプタンと比べると、産生量の割合は低いです。肝臓や消化器の疾患などによっても発生するため、歯周病を患っていない場合は、全身疾患を疑う必要があります。

口臭を誘発する歯周病以外の5つの原因

お口のにおいの原因が必ずしも歯周病とは限りません。口臭の原因は、自然な生理現象からくる「生理的口臭」と、口の中や体内が原因で起こる「病的口臭」に分けられます。2種類に分類される主な口臭の原因は、以下のとおりです。

  • 【生理的口臭】唾液の分泌量が減った
  • 【生理的口臭】飲食物・喫煙・薬
  • 【病的口臭】口腔領域のトラブル
  • 【病的口臭】耳鼻咽喉領域の疾患
  • 【病的口臭】全身疾患

それぞれ詳しく解説します。

【生理的口臭】唾液の分泌量が減った

口内の唾液の分泌量が減り、口の粘膜が乾燥することによって、口臭は強くなります。唾液には抗菌作用のある成分が含まれているので、唾液が減少すると抗菌作用や洗浄作用が働かなくなり、においを発する細菌が増殖するのです。

唾液の分泌量は、以下のような原因によって減少します。

  • 生理的要因(起床時・空腹時・緊張時・疲労時)
  • 加齢による全身の水分量の減少
  • ホルモンの変調による要因(妊娠時・月経時・思春期・更年期)

また、口呼吸の癖がある方は、さらに口内が乾燥します。唾液の分泌量を増やすためには、食事の際によく噛んで食べたり、鼻呼吸を習慣づけたりする工夫が必要です。

【生理的口臭】飲食物・喫煙・薬

外部から取り入れる嗜好物や飲食物、薬物も、口臭を誘発します。代表的な嗜好物として挙げられるのは、タバコやカフェイン飲料、お酒です。カフェインやアルコールには利尿作用があるため、唾液を含む体内の水分量が減少します。また、たばこに含まれるニコチンの作用によって、血管が収縮し、唾液の減少をもたらします。

独特のにおいを発するネギやニンニクも、口臭の一因です。日常生活で活性型ビタミン剤などの薬を服用している方も、肺からの呼気によって口臭をもたらす可能性があります。外部から取り入れている物に、上記で挙げたような嗜好物・飲食物・薬物がないかを確認してみてください。

【病的口臭】口腔領域のトラブル

歯周病を含む口腔領域のトラブルも、口臭を誘発する大きな一因です。口臭を発するのは、歯周病だけではありません。虫歯や歯垢、舌苔といった身近にある症状も、口臭を引き起こす原因になります。

また、補強物として義歯を装着している方は、隙間に汚れが溜まりやすく、菌の温床になりやすいです。特に、プラスチック製の人工歯はにおいを吸着します。重大な病気としては、口内の悪性腫瘍も口臭を誘発します。

病的口臭の9割以上は、口の中のトラブルが原因していると言われているので、まずは歯科医院で検査を受けるのがおすすめです。

【病的口臭】耳鼻咽喉領域の疾患

鼻と口は直結しているため、耳鼻咽喉領域の疾患によっても口臭が発生する場合があります。副鼻腔炎や咽頭炎、悪性腫瘍などの膿を伴う疾患は、嫌気性細菌がタンパク質を分解することによって、腐敗臭を発します。

また、耳鼻咽喉領域の疾患によって鼻閉が起こると、口呼吸になり、さらに強い口臭を生じるようになるでしょう。口臭と共に鼻づまりや鼻水の症状がある場合は、耳鼻咽喉科を受診することを推奨します。

【病的口臭】全身疾患

口臭の発生源には、血液由来のものがあります。血液中に溶け込んだ成分が、呼気となって体外に排出されることで、口臭として認識されるのです。その原因となる全身疾患と臭気物質には、以下のようなものが挙げられます(※3)。

  • 糖尿病:アセトン
  • 腎疾患:アンモニア、ジメチルアミン
  • 肝疾患:ジメチルサルファイド、酪酸
  • 肺ガン:アセトン、アニリン

※3参考:日本顎咬合学会誌 咬み合わせの科学

原因となっている病気を治療することが、口臭の抑制にも繋がります。

歯周病が引き起こす口臭以外の3つの症状

口臭の原因は様々なので、においだけで特定するのは難しいです。口臭と共に以下のような症状がある場合は、歯周病に起因している可能性が高いと言えるでしょう。

  • 歯茎の腫れ・痛みが生じる
  • 歯茎から出血する
  • 歯がぐらつく

それぞれの症状について、詳しく見ていきましょう。

歯茎の腫れ・痛みが生じる

比較的軽度な歯周病である歯肉炎になると、歯の周囲の歯茎が腫れてきます。歯垢や歯石を住処とする歯周病原菌が増殖することで、歯茎を赤く腫れあがらせるのです。歯茎が腫れることで敏感になり、痛みを感じる場合もあります。

歯周病は初期症状が出づらい病気でもあるので、腫れや痛みが生じた時点ですぐに歯科医院を受診してください。そのまま放置して、怠った口腔ケアを続けていると、歯周病が悪化する危険があります。

歯茎から出血する

食事した後に歯茎から血が出たり、歯ブラシで軽く磨いてただけで血が出たりする場合も、歯周病の可能性が高いです。歯肉炎から進行した「軽度歯周炎」では、歯茎の炎症に加えて、歯茎の境目からの出血が見られます。

また、さらに重度の歯槽膿漏になると、出血と共に膿が増えるようになるので注意が必要です。歯茎からの出血は、歯周病の重要なサインなので、見逃さないようにしましょう。

歯がぐらつく

歯周病が重度になると、歯茎や顎の骨が破壊され、歯を支えることが難しくなります。その結果、歯がぐらつき始め、最悪の場合は脱落する可能性もあります。この段階まで症状が進んでしまうと、抜歯せざるを得ない状況になることも少なくありません。

歯周病原菌は、血液に乗って体全体へと運ばれていきます。歯周病の末路は、脱落だけに留まらず、以下のような全身疾患にも繋がります。

  • 早産・低体重児出産
  • 血管の動脈硬化による心筋梗塞・脳梗塞
  • 血糖値を下げるインスリンの働きを低下させる糖尿病

歯周病含む口腔トラブルの臭いの5つの治し方

病的口臭の原因の9割を占める口腔トラブルの治し方として、以下の5つの方法が挙げられます。歯科医院での治療に加えて、毎日の自宅でのセルフケアも非常に重要です。

  • 歯科医院で歯周病治療を受ける
  • 定期的に歯のクリーニングを受ける
  • 歯の丁寧なセルフケアを心がける
  • マウスウォッシュで口口内を洗浄する
  • 舌みがきを行う

それぞれ詳しく見ていきましょう。

歯科医院で歯周病治療を受ける

歯周病による口臭を改善し、予防するためには、歯科医院で治療を受けるのが最も最善の方法です。早い段階で治療を受けることで、歯周病の進行を食い止め、口臭の悪化を防げます。歯周病治療で行われる主な治療法は、以下のとおりです。

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当院の歯周病治療においても、患者様の負担が少ないよう、レーザー治療を導入しております。レーザー治療の費用やメリットについて気になる方は、こちらの記事も参考にしてみてください。

関連記事:歯周病のレーザー治療とは?進行度別の費用やメリット・デメリットも解説

口臭が気になる方は、「ガスクロマトグラフ検査」を行うことで、歯周病による口臭の原因物質である「硫化水素」「メチルメルカプタン」「ジメチルサルファイド」の成分量の検出が可能です。

定期的に歯のクリーニングを受ける

歯周病原菌の温床となる歯石は、普段のブラッシングでは除去できません。また、歯と歯の隙間などの歯ブラシが届きにくい場所には、どうしても歯垢が残ってしまいます。定期的に歯のクリーニングを受けることで、歯垢や歯石を綺麗に掃除してもらいましょう。

当院においても、口臭の原因となる虫歯・歯周病の検査、歯垢や歯石の除去などを目的にした歯のクリーニングを行っています。歯周病は早期発見が重要なので、自覚症状が現れる前に、定期的な受診を心がけてください。

歯の丁寧なセルフケアを心がける

口臭の原因となる歯周病菌の増殖を抑えるためには、毎日の丁寧なブラッシングが欠かせません。歯科医院を受診するだけの一方通行の処置だけでは、歯周病が再発し、口臭が強くなる可能性も高まります。

一般的なブラッシングでは、口内全体の約60%~70%の磨き残しがあると言われています。歯間ブラシやデンタルフロスも使い、歯ブラシだけでは届かない隙間の掃除も行いましょう。歯周病菌の活動を抑える歯磨き粉を使用するのも、おすすめです。

マウスウォッシュで口腔内を洗浄する

口内に潜む口臭の原因菌の抑制を防ぐために、マウスウォッシュも効果的です。マウスウォッシュは歯磨きをした後に使用します。あくまでも一時的な効果に過ぎないので、根本原因を治すためには、歯科医院の受診が必要です。

マウスウォッシュを選ぶ際は、以下のような成分が配合されたタイプを選ぶことで、口臭の抑制に効果が期待できるでしょう。

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舌みがきを行う

舌苔には、食べかすや剥がれ落ちた細胞など、口臭の原因菌が増殖するエサが多く存在します。舌苔はうがいや歯磨きでは落とすことができないので、舌磨きを行うのが効果的です。以下のような手順で、歯磨きと併せて舌磨きも行ってみてください。

  1. 舌磨き用のジェルや水で、舌を湿らせる
  2. 舌専用のブラシで奥から手前に向かって、優しく磨く
  3. うがいをして口内に残った汚れを落とす

歯周病のにおいに関するよくある質問

最後に、歯周病のにおいについて、よくある質問を紹介します。

  • 歯周病の口臭を抑えるマウスウォッシュの選び方は?
  • 歯周病の臭いを消す薬効成分配合の歯磨き粉はある?
  • 歯周病による口臭が治った人の治療法は?

それぞれ詳しく見ていきましょう。

歯周病の口臭を抑えるマウスウォッシュの選び方は?

マウスウォッシュには、使用後の爽快感を出すためにアルコールが含まれているタイプもありますが、おすすめできません。アルコールには水分を蒸発させる作用があるので、口内が乾燥し、口臭を悪化させる可能性があるからです。

口臭の原因菌を殺菌したり、揮発性硫黄化合物の産出を抑制したりする成分が含まれたマウスウォッシュを選ぶことで、口臭を一時的に抑えられます。

歯周病の臭いを消す薬効成分配合の歯磨き粉はある?

口臭除去に特化した歯磨き粉も存在します。以下のような薬効成分が複数配合された歯磨きを選ぶことで、あらゆる面から口臭除去にアプローチできるでしょう。

  • 口臭原因菌を洗浄する炭酸水素ナトリウム
  • 口臭原因菌を殺菌するラウロイルサルコシンNa
  • 舌の上の菌を洗い流すイソデシルガラクトシド液

歯周病による口臭が治った人の治療法は?

当院では、患部へのレーザー照射による歯周病治療を行うことで、口臭の改善へと繋がります。また、レーザー治療と並行してスケーラーという器具を用い、歯周病原菌の温床となる歯石を綺麗に取り除きます。歯周病治療の流れが気になる方は、こちらの記事もチェックしてみてください。

関連記事:歯周病治療の流れとは?重度の歯周病を治す治療法や治療期間・費用も解説

まとめ|歯周病のにおいを治すには受診が必要

歯周病を発症することで、歯周病原菌が揮発性硫黄化合物と呼ばれるガスを産出し、卵の腐敗臭や生臭い魚のにおいを発生させます。口臭の原因が歯周病にある場合、歯茎の腫れや出血、歯のぐらつきといった症状も現れるので、併せて確認しましょう。

歯周病を治すためには、歯科医院の受診が欠かせません。当院では、口内の揮発性硫黄化合物を検出し、レーザー治療やスケーリングなどの方法で歯周病菌を抑制します。歯周病が重度まで進行している場合は、トータルヘルスケアプログラムという治療法もございます。

当院の口臭予防治療について気になる方は、下記のページをご覧ください。

この記事を書いた人

加藤 直之

大阪の梅田にあるえみは総合歯科、加藤です。 当院は、歯医者さんの「痛い・怖い・行きたくない」というイメージをなくし、患者様が悩みを相談できてリラックスした状態で治療ができるそんな医院を目指し運営しております。

資格・所属

NPO法人日本歯科予防協会理事/ISOI インプラント認定医/ドライマウス認定医/日本ドライマウス学会会員/日本抗加齢歯学会会員/医療情報技師認定証/ITIインプラント認定/AQBインプラント認定/ザイブインプラント認定/POIインプラント認定/インプラント学会 所属ブローネマルクインプラント認定/SARGONインプラント認定/審美歯科学会認証