根管治療で失敗しない歯科医院の選び方——歯科医師が教える7つの確認ポイント

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この記事でわかること

「虫歯がひどくなって神経を取ると言われた」「根管治療(こんかんちりょう)を受けることになったが、どこに行けばいいかわからない」——

そんな不安を持っている方は少なくありません。

根管治療は外から見えないため、治療の質を患者側が判断するのが難しい領域です。

この記事は、予防歯科専門家・加藤幸先生による動画

「【超重要】根管治療で失敗しない歯医者のポイント7選」

をもとに、良い根管治療を行う歯科医院の見極め方を整理しました。

この記事を読むとわかること:

  • 虫歯が進行して根管治療に至るまでの流れ
  • 「痛みが消えた=治った」という誤解の危険性
  • 根管治療の質を見極める7つのポイント
  • 神経を取ることの長期的なリスク


「痛みが消えた」は治ったサインではない

まず知っておいてほしい重要な事実があります。

虫歯の痛みをずっと我慢していたら、ある日突然痛みが消えた——

そういう経験をした方がいるかもしれません。

加藤先生はこれをこう説明しています。

「これは治ったんじゃなくて、ある一線を超えて歯の神経が死んじゃっているんですよ」

神経が死ぬと痛みの感覚がなくなるため、「治った」と思い込んでしまう方が多いそうです。

しかし問題はその後です。

「死んだ神経が中で腐敗してくるんですね。歯の中で分からないうちに歯の根っこに膿が溜まって、顎の骨をどんどん溶かしていく」

神経がある間は痛みというシグナルが出ますが、神経が死んでしまうと無症状のまま骨の溶解が進みます。

そして次に気づくのは、顔が腫れ上がるほどの急性炎症が起きたときです。

「虫歯の時の痛みの比じゃないぐらいの強烈な痛みが来たり、風船みたいに顔が膨れ上がるような状態になってくる」

痛みが消えた段階でそのまま放置せず、早めに歯科医院を受診することが重要です。


根管治療の質を見極める7つのポイント

加藤先生が「今のスタンダードな根管治療をちゃんとしているクリニックがどういうことをしているか」として挙げた7つを整理します。

① ラバーダム防湿をしているか

根管治療中に唾液が入り込むと、治療部位が汚染されて治療の効果が大きく落ちます。

これを防ぐのが「ラバーダム防湿(ぼうしつ)」——

ゴムのシートで治療する歯を口内から隔離する処置です。

「ラバーダム防湿をちゃんとして歯の神経の治療のところをちゃんと隔離して、唾液が入らないようにして術野を確保してから治療をしていくのが世界的なスタンダード」

しかし加藤先生によると、日本でラバーダムを実施している歯科医院は多くても2割程度とのことです。

その理由は、保険診療の治療費の範囲内ではラバーダムをすると赤字になってしまうという制度上の問題があります。

「ラバーダム防湿をちゃんとしてくれているところというのは、赤字覚悟でやってくれているところがほとんど。

やってもらえるところにはありがたいと感謝してもらえればと思います」

加藤先生はラバーダムを「7つのポイントの中で最も重要」と明言しています。

「唾液が入ってきてしまうと、いくらニッケルチタンファイルを使おうが、MTA薬を使おうが、全部台無しになってしまう」

② 拡大器具(ルーペ・マイクロスコープ)を使用しているか

歯の根は非常に細かく、肉眼での治療には限界があります。

「裸眼で何もしない状態でこの術野を見て根の治療していくのは絶対に分からない」

最低限ルーペ(拡大鏡)、理想的にはマイクロスコープ(歯科用顕微鏡)を使用しての治療が推奨されます。

マイクロスコープは根の状態を拡大して確認しながら治療できるため、見落としや処置の精度に差が出ます。

③ CTを撮影して骨の状態まで確認しているか

通常のレントゲンでは確認できない病変が、CTによって初めて発見できるケースがあります。

「CTが取れるけど取らないのと、取りたいけど取れないのでは全然違う一院の話。CTの装置がちゃんとあるクリニックで見てもらうのがいい」

特に根管治療では、根の先端に膿が溜まっているかどうかや、根の形状の把握にCT情報が役立ちます。

 

④ 歯根端切除術(しこんたんせつじょじゅつ)などの外科処置ができるか

根管治療はあくまでも歯を残すための「保存的な治療」です。

それでも対処できない場合、根の先端を切除して直接病変を除去する「歯根端切除術」という外科処置が必要になることがあります。

「外と中から挟み撃ちで消毒して病変をなくしていく方法がスタンダードになってきます」

この術式を習得している歯科医師は限られているため、対応できるかどうかを確認しておくことが重要です。

対応できないクリニックの場合でも、適切な病院へ紹介してもらえるかどうかが選択基準になります。

 

⑤ 治療回数が適切かどうか

根の本数は歯の位置によって異なります。前歯は通常1本ですが、奥歯になるほど増え、4本ある場合も。

「奥歯で根が4本あるパターンというのは前歯の4倍かかってしまう」

治療回数が多いことは必ずしも問題ではなく、重症度や根の本数によって変わります。

「何回もかかるのはおかしい」と思う前に、担当の歯科医師に根の状態を確認してみましょう。

 

⑥ ニッケルチタンファイルを使用しているか

根管内を清掃する際に使用する器具のことです。従来の手動器具と比べ、加藤先生によると「今までの何倍ものスピードで綺麗にすることが今できる」とのことです。

ただし、ニッケルチタンファイルもコストがかかる消耗品であるため、保険診療の範囲内での採用が難しいという背景があります。

「大赤字になってでもこれがいいんだと使ってくれているところが、本当にベストかなと思います」

 

⑦ MTA(エムティーエー)という薬剤を使用しているか

根管治療で使用する薬剤の中で、現在世界的に最も治療成績が良いとされているのがMTAです。消毒効果が高く、溶けた骨の再生を促す作用が期待されています。

「今まで治らなかったような病変も残せるようになってきた。僕らからしたら救世主みたいなお薬」

MTAには含有率の違う製品もあります(100%・50%・20%など)。加藤先生は「MTAを使うかどうか、どんな選択肢があるか、一度聞いてみてもいいかもしれない」と述べています。


神経を取った歯は「枯れ木」になる

最後に、根管治療に至ってしまった場合の長期的なリスクについて、加藤先生はこんな比喩で説明しています。

「柿の木の話をいつもするんですけど、栄養源がある生きた木は枝を曲げてもしなってなかなか折れない。でも枯れ木はすぐポキっと折れてしまう。歯も一緒で、神経を取るということは神経だけじゃなくて付随する血管・栄養源も全部なくなってしまう」

神経を取った歯は脆くなり、割れやすくなります。これは将来的にその歯を失うリスクに直結します。

「一線を超えてしまうと将来的には歯の中はもうカウントダウンの時間になってしまう。できたらその前に歯医者に行ってください」

根管治療は必要になってしまったときの選択肢ですが、そもそも根管治療に至らないよう、虫歯の初期段階で対処することが最善の予防策です。


まとめ:根管治療の質を左右する7つのポイント

ポイント 確認内容
① ラバーダム防湿 治療中に唾液が入らない環境を作っているか(最重要)
② 拡大器具 ルーペまたはマイクロスコープを使用しているか
③ CT撮影 骨の状態まで確認できる設備があるか
④ 外科処置 歯根端切除術などに対応しているか
⑤ 治療回数 根の本数・重症度に応じた適切な回数かどうか
⑥ ニッケルチタンファイル 最新の清掃器具を使用しているか
⑦ MTA薬剤 治療成績の高い薬剤を使用しているか

これらすべてが揃っている歯科医院は多くありません。しかし、少なくともラバーダムの実施と拡大器具の使用を確認するだけでも、受ける治療の質を大きく変えることができます。


この記事は、加藤直之先生による動画

「【超重要】根管治療で失敗しない歯医者のポイント7選」

をもとに作成しています。

各ポイントへの先生の詳しい解説は、ぜひ動画でも確かめてみてください。


根管治療を勧められている方、または神経の状態が気になる方は、まずお気軽にご相談ください。

この記事の監修・執筆者

加藤 直之(かとう なおゆき)

医療法人えみは会 理事長
愛知学院大学歯学部卒業。大阪府羽曳野市にて「加藤総合歯科・矯正歯科」を開院。一般歯科から高度なインプラント治療、矯正歯科まで幅広く手掛ける。青山病院にて歯科口腔外科、ドライマウス、舌痛症外来の非常勤講師・担当医を兼任するなど、難治性の口腔疾患や外科的アプローチにおいても深い知見を持つ。

資格・実績

Clinical Oral Implantology (インプラント認定医)NPO法人日本歯科予防協会理事AQBインプラント認定ISOI インプラント認定医、 ザイブインプラント認定、 ドライマウス認定医、 POIインプラント認定、 日本ドライマウス学会会員、 インプラント学会所属、 ブローネマルクインプラント認定、 日本抗加齢歯学会会員、 SARGONインプラント認定、 医療情報技師認定証ITIインプラント認定審美歯科学会認証